カンジスク賛歌

この右膝のタメを見よ!!
 

これこそが基本中の基本であり、万人が教科書とすべきものだ。これがすべてを生むのである。

カンジスク、史上最強のベースラインプレイヤーを狙える韓国のエース(すくなくとも私がみたなかでは最強、最良だ)。

 まだ19才だった1994広島アジア五輪で国別対抗戦に優勝。
 1997年釜山での東アジア五輪では国別対抗戦、ダブルスの2種目に優勝。シングルスは同国のキムキョンジャにやぶれ準優勝。
 1998年バンコクアジア五輪、国別対抗戦、個人戦(アジア五輪はダブルスのみ)ともに優勝。

バンコク以降は、多少テンションが落ちたかに見えるが、ぜんぜんそんなことはない。 問題なのは前衛力であり、これは韓国女子永遠の課題(多分ボールに起因するものだと考えるのだが)。

1999年の台湾の世界選手権でも結果(国別対抗2位、ダブルス3位)こそでなかったものの、もっとも感動させてくれたのが彼女のゲーム振りだった。 なにしろ、メンバーが一新してしまっていた韓国チームの他の4人は全くたよりにならず、彼女ひとりで台湾戦をたたかったようなものだったからだ(2戦全勝)。

現在、静岡に留学中のキムキョンジャさんにカンジスクの話しを聞いたことがある。 「(精神的に)切れやすい」ということだが、少なくともその問題は年齢を重ねて解決されたように見受けられる。
1、4番にでたので2,5番にでたShi-Ting WANGとは残念なことにあたらなかったが、シングルスはともかく、ダブルスだったら彼女ならなんとかなったかもしれない。

 左モノクロ画像は2000年アジア選手権韓国国家代表決定戦でのもの。 ここでの彼女のテニスもすごかった。 前衛のハンチユンの体調が万全でなく、ここでも孤軍奮闘だったが2次予選で男女を通じ唯一組5戦全勝。 この2次リーグでの戦いぶりはみることができなかったのだが、韓国関係者が感嘆していたぐらいだから、よほどすごかったのだろう。 最終リーグでも紙一重のところまでいったがハンチユンがかなりきつそうで好調ヤンクンヨー・イミーキョンにやぶれる。 ここでかなり体力を消耗し、それでもシングルス予選では朴栄姫との決定戦(実質5ゲーム3セットマッチ)のファイナルにまでもちこむが完全にスタミナがきれ、 どうしようもなかった。とはいってもスタミナに問題があるわけではない。韓国予選がきびしすぎるのだ。 たしかカンはこの日シングルスを7試合やったはずである。 とてつもないスタミナが要求されるわけだ。前日のダブルスと合わせ彼女の疲労は極だったのではないか。

カンジスク(姜志淑) 1975.3.4生

ロケット電機を経て現在全羅南道庁所属

カラー画像は1998バンコクアジア五輪より
 

 

ネットプレーの平凡さは彼女のシングルスを時代おくれのものにしている。 巧みな配球で相手を追い詰めるのだが、決定打が打てない。そうなると途端にその巧みさは意味を失う。中でも特にスマッシュ力は見劣りする。ディフェンスのボレーはまずまずだが。
 サービスの平凡さも惜しいがこれは女子全体にいえることだ。 とくに韓国女子はサービスを重視していない。 あのShi-Ting WANGは(WTAなかでは)決してすごいサービス力を持った選手ではなかったが、 世界選手権ではくらべるもののいないほど圧倒的なサービス力で、それが彼女の勝ちに大きく貢献していたことは疑いない。 サービスの研究は必須である(簡単だ。WANGの成功に、硬式テニスに学べばよい。むろんカットサーブという選択肢もある)。

 さてグラウンドストロークだが、 韓国女子というと梁金曜や朴栄姫のような剛球を想像する人がおおいかもしれないが、彼女は全然ちがう。 ウエイトシフトを完璧にコントロールでき、右足にグッとためて(つまりボールを引きつけて)、つねに80%ぐらいの力で丁寧にコースを打ちわける。 かといってボールのクオリティが低いわけではなく、むしろ弾性では群を抜いており、つまり最良の球質を獲得している。 まあ言葉で言い表わすのはとてもむずかしいので、どうか実際にみてもらいたい。ため息がでるはずだ。 現在もっとも見る価値のある女子選手であることは保証する。 フォアもバックも全く同じように打てるので驚異的なコートカヴァが実現する。 それは、すべてはこの右膝の曲がりだ。 これが完璧なバランスを生んでいる。 軸も真直ぐで全くぶれがない。左肩が全然下がっていないのもこの右膝の曲がりがあればこそだ。 さらに凄いのは常にこの状態をつくりだせることで、驚異的なフットワークと的確なアンティシペーション(予測)があればこそである。そのフットワークの実現にはバックハンドになんのハンディもないことが大きい。常に最良のポジションを確保することできるのである。真に技術力の勝利である。
 彼女よりすごいボール、速いボールを打つ人はたくさんいる。 先にあげた梁金曜や朴栄姫もボールそのものの威力は姜志淑より上だ。 なにも韓国に限らず、日本にだってたくさんいる。問題は制御だ。 姜志淑は完全にボールを制御できる。これほど完成度の高い打球力をもった後衛がいままでいたろうか、というほどのものだ。 それは、すこしも結果を急がない、高い志を強く感じることができる技術であり、 やたら結果をもとめたがるどこかの国では考えられないコンセプトをもっている。 これが本当の打球力、技術力だという気がする。 要するに次元が違うのである。あれだけ自在にボールがあやつれればそれは楽しいだろう、という気がする。 いったいどういうメンタリティのもとでこういった選手がうまれたのか非常に興味がある。