父の死をこえて--劉永東--

 

中堀・高川戦から劉永東の強烈なバックボレー。中堀選手のサーブから、ミドルを痛烈に破るショートレシーブ、それをやっと返球したものを叩いた。劉永東だけでなく今回の韓国選手のリターンは完璧だった。あのバンコク大会のように。

ちなみに劉永東ぐらい写真のとりやすい前衛はいない。

劉永東は大会の一ヶ月前に父親を亡くしている。そのことが新聞に大きくとりあげられていた。国別対抗戦優勝がきまったあと応援にきていた母親のところで顔をふせたまま男泣きする彼の姿がみられた。「父の死をこえて」のサブタイトルは韓国のスポーツ紙の見出しより。

奇跡のネットプレーヤーの奇跡の復活である。

 プレヴューではああ書いたものの、4月の予選時のヨレヨレぶりでは内心心配でしかたがなかった。が、あたりまえだがそんな凡人の思惑をはるかにこえてヨンドンは偉大だった。まさに、神、それも荒ぶる神だ。圧倒的存在感で他国を沈黙させた。

 今大会はこの劉永東と廖南凱(台湾)がともに3年振りに国際大会に姿をみせたのだが、このふたりがいるだけでトーナメントの質は一気に遥かな高みの昇った。こんなゲームがみたかったのだ、と叫びだしたいぐらいの興奮だった。これはなにもアジア競技大会だから、というのとは少し違う気がしてきた。ふたりがでた世界選手権(1999)でも同様の興奮を覚えたからだ。2000年の佐賀,2001年の大阪とこの二人を参加しなかったのは、いかなる理由があるにせよ、痛恨のきわみであり、国際大会のありかたそのものを見直してほしいものだ。くそまじめに、あるいはあたりまえに運営してよし、なんて競技ではまだまだないのだ。もっと真剣に考えないといけない。でもだれも考えていないのだろうけど。

具体的にどうすればいいのか?一番手っ取り早いのは、エントリーの上限を増やすことだ。現在の上限5人を10人にするだけで、大会は飛躍的にレベルアップするだろう。

この栄光を姉に--黄晶煥--

 黄晶煥・金煕洙vs.廖南凱・蔡和岑が今大会のベストゲーム
タブロイド版スポーツ新聞『GOOD DAY』の紙面一杯をかざった黄晶煥の記事。「この栄光を姉に」はこのなかのフレーズである。

 今回の男子韓国チームには訃報が相次いだ。黄晶煥のお姉さんはながらく難病のため、闘病中だったのだが、大会期間中になくなったのだ。

 韓国男子は段違いの強さをみせたわけだが、その強さはいささか刺々しいくらい厳しいものに感じられた。圧倒的な技量と練習量があるのに、そのゆとりが感じられないのだ。もちろん地元開催のプレッシャーも強烈だったのだろが、なにか悲壮なものがかんじられたのは、この二人の身内の不幸も関係があるのかもしれない。

 黄晶煥は今大会ベストとはいえないできだった。調子は悪くないし、ボールもとんでいたが、やわらかいロブをほとんどつかわない。激しさも彼の特徴だが、あの柔らかな持ち味もみたかった。ただ、個人戦での郭旭東・方同賢戦、廖南凱・蔡和岑戦は間違いなく今大会のベストマッチであり、つまりもっとも今大会をもりあげてくれたひとりである。

劉永東の首をひねらせるのは廖南凱ただひとり

個人戦ダブルス黄晶煥・金煕洙戦での廖南凱。超人的な集中力とフットワークをみせた。廖南凱健在を強烈にアピール。
上画像と同対戦での黄晶煥・金煕洙。黄晶煥の表情が厳しい。

 (黄晶煥・金煕洙は)廖南凱・蔡和岑戦は内容的には完敗。ただ蔡和岑までも味方につけた?のでようやく勝てた感じ。それほどこのゲームでの廖南凱はすさまじかった。

 廖南凱は昨年いためた上椀部(肩?)の痛みが悪化し、国別対抗戦はラケットがフルスイングできない状況で、こんな悲しいことはなかったが、個人戦に入りまずまず復活してきた。相変わらずフルスイングできないので速いボールはなかったが、異常なフットワークでコートを支配し、相手前衛は当然のこと、後衛のリズムをも狂わせる。信じ難いタイミングで打たれるライジングに黄晶煥は何本もミスを重ねた。金煕洙もまったく動きをつけられず、格の違いをみせつけられた。

 廖南凱にはなんとか勝って決勝で劉永東と3度(たび)対戦してほしかったが。劉永東の首をひねらせるのは廖南凱ただひとりだからである。

 観戦記について、話しが前後しているので申し訳ない。今大会は万全を期すためにビデオカメラを2台つかって撮影したので膨大な量のテープがあり、その整理におわれているのが現状なのです。御容赦を。