揚勝發 進化型。いや強化版郭旭東とでもいいたい逸材。

 10月19日〜23日の日程で 台湾にいってきた。台湾の国体である九十二年全国大運動會を観戦するためである(92は台湾暦)。
 この時期にそういう大会をみにいくということは世界選手権代表の偵察?と思われそうだし、実際、そういわれたりもしたが、もちろんそうではない。だいたいがそういう立場にもない。廖南凱をみにいったのである。葉育銘をみにいったのである。そして非常に満足して帰国した。もちろん代表にも興味津々なのでみてきた。廖南凱もこのウェブサイトのことを知っているのでその辺は随分を気をつかってくれて、おかげで選手全員の写真をとることができ、もう恐れ多くて台湾に足をむけて寝られないほどだ。感謝のことばもない。 

 今回の男子代表は随分メンバーがいれかわっていて、こんなことはここ最近全くなかったことなので、面喰らったものだ。大体、方同賢と林朝章しか顔をしらないのだから。
 この国体には柯釜元以外の代表が全員出場している。そのうち趙士城以外の全員のプレーをみることができた。
 この大会は男子団体、女子団体、男子ダブルス、女子ダブルス、男子シングルス、女子シングルス、ミックスダブルスの計7種目で、それぞれのエントリー数が8と非常にすくない。予選をおこなっているからで、柯釜元がでていないのは単に予選で落ちたからである。代表でも揚勝發、趙士城、王俊彦はダブルスにはでていない。

林朝章 逆クロスを振り切ったところ。廖南凱とのゲームはネットから数センチという超フラット高速ラリーの応酬。

 今回の代表以外の代表、つまり代表経験者もずらり顔を揃えた。郭旭東、簡安志、葉育銘、劉家綸、謝敏弘そして廖南凱。むしろ彼らが主役で現在の代表は影が薄い、というのが正直な感想だ。

 今回の(世界選手権)選手選考をうけて、必ずでそうなのが、台湾は若返りをはかった、というフレーズである。つまり台湾球界そのものの意志で若手に切り替えた、なんてことを必ずいいだすであろう。そうではない。これまでの代表が代表に名を連ねていないのはそれぞれに理由があってのことであり、特に’肩たたき’があったわけではないのである。多額な報奨金が与えられる台湾の国家代表なのでそんなことはありえない。選手選考の厳密さは廖南凱もそういっていた。

王俊彦。異様に大きいラケットフェースが無気味。

 たとえば廖南凱、最初は予選に参加したが、ダブルス予選で敗れたあとシングルス予選にはでなかった。肩、肘、太ももに故障をかかえ、それはかなり深刻だったようだ。郭旭東も仕事の関係で予選にはでていないし、多分今後もでられそうもない、という。まだまだこれから、とおもっていたし、この国体でみせたテニスはやはりすばらしかったから残念なことだ。

 今回の代表はその元代表たちに対して、ほとんど勝つことができなかった。ミックスダブルス以外の全部をみたが、私がこの大会をみて代表を選ぶとしたら、廖南凱、葉育銘、郭旭東、方同賢、劉家綸の五人は即決。あとひとりが難しいが、揚勝發をいれようかな。そんな感じだ。

趙士城
柯釜元
蕭淑琳
藍奕芸

 揚勝發はすばらしいと思う。郭をさらに進化させた感じとでもいおうか。日本では絶対に生まれないタイプでさらに台湾でもニューウエーブだ。今回結果がでるかどうかはわからないが、方同賢と組むのだから、充分に可能性はある。
 その方同賢は非常にいい仕上がり具合。ほとんど完璧だった。それにレベルアップもしている。ネットプレーもサービスもサービスリターンも。釜山ではさんざんだった。廖南凱は台湾の前衛技術は韓国ボールには全くマッチしないといっていたが、それでも中堀・高川には勝った。
 今回は経験者は彼しかいないわけで、チームは彼が中心。エースだけはどこにもまけない、というチームの要だ。

 ところでこれは男女ともだが代表はベースライナーが4人、ネットプレイヤーが2人の編成。男子はダブルス予選で雁行ペアが勝ち(二組)、シングルス予選でベースライナーがふたりぬけたようだ。ダブルス予選一位は揚勝發・方同賢、二位は(おそらく)王俊彦・趙士城。シングルスでは林朝章、柯釜元がぬけた。

 林は今回代表のNO.2。高校生のときに朝日カップや札幌国際で劉家綸のペアとして来日したことがあり、現在も劉家綸とくんでいる。このペアでこの国体もダブルスに出場。簡安志・葉育銘、廖南凱・方同賢を連破して決勝に進出した。特に廖南凱・方同賢を0でとばしたときは凄かった。が翌日の決勝では郭旭東・方信淵のうまさになすすべがなく、劉家綸も悪かったが、呆気無く敗退。まだまだ若い。が前日までのテニスが通用しないとわかると、さっとテニスを切り替える、冷静さももちあわせており、さらに経験をつめばというところ。また廖南凱・方同賢を0でとばす、というとんでもなさもあり、のせれば今回の台湾では一番恐い存在かもしれない。

 王俊彦は変則タイプ、これも絶対に日本では生まれない選手だろう。というか成長過程で、間違いなく、スポイルされてしまう。変則的でちょっと評価が難しい。私自身もまだ思い込みが強い部分があるので、公平な判断がむずかしい。

方燕玲(左)と王俊彦。二人とも台南縣の所属。ミックスでペアを組む。ふたりとも後衛だ。
もと世界チャンピオンの頼さんと、蕭雅聲。蕭雅聲は前衛。国際大会は4度目。技術的には高いものをもっている。以前にくらべてサーブがとくに良くなった。

 趙士城に関してはプレーは全然みてない。国体では団体で1勝4敗は負け過ぎだろう(ちなみに揚勝發-7勝2敗 王俊彦-5勝2敗、林朝章-6勝2敗 方同賢-7勝1敗、廖南凱-8勝1敗)。ただミックスでは周秋萍・蔡和岑に勝って3位にはいっている。

 オーダはどうなるか。揚勝發・方同賢でトップ。シングルスが林朝章。最後が王俊彦と趙士城あるいは柯釜元。個人戦の結果次第ではどうなるかわからない。

 女子はどうか?ある人にも聞かれたので、そのときの答え。’うまいけど強くはない。’

これはよくいわれる上手いテニスより、強いテニスをめざしたい、というたわ言とは関係ない。 バカなことをいっちゃいかんよ。上手くなったから強くなるのだ。もちろん上手くなるだけでは勝てない。経験やその他のもろもろの要素がくわわって強くなるのだ。もちろん強くなれない人のほうがたくさんいるわけだが。

 とくに前衛が育ってない。昨年のSHI-TING WANGや、林・鄭のようなエースもいない。ただ天才的な選手ばかりなのでみていて参考になる部分、学ぶ部分は無数にある。台湾に限らず、勝負けのみにこだわった観戦をすると何も残らないので要注意だ。

 周秋萍は相変わらず美しいフォームで魅了される。釜山のミックス2位であり、メダルが充分に狙える。 台湾女子は小柄で可愛らしいので皆若くみえるし、実際そうなのだが、この周秋萍と方燕玲は28才であり、韓国、日本のだれよりもベテラン?である。周秋萍は大学院生。方燕玲はたしか教師でコーチをしていると聞いた。台湾女子のソフトテニスへのモチベーションは大学進学の手段にとまっていて、それ以後なかなか続けてくれないと、この夏亡くなった林永寛さんが以前嘆いていらっしゃったが、そんな中では希有?な二人だ。
女子団体表賞式。左から周,武,江。
武は2000,2001と代表になっているが今回は予選落ち。団体の表彰式はメンバーがひとりひとり壇上にあがる形式。

 なにか歯切れが悪いな。特に男子に関しては。よくわからないのだ。台湾の国内大会をみるのははじめてだ。もちろん台湾ボールでおこなわれていて、これがまるで、なんというか・・・全然違うのだ。韓国とも日本とも。判断がつきかねるのだ。

 男子は初出場がおおいから今回は難しいという見方はもちろんできるが、廖南凱は初出場だった北京で大活躍して、団体優勝に大きく貢献した。郭旭東・方同賢はバンコクアジア五輪が国際大会初出場だったが、いきなり劉永東に勝った。それどころか廖南凱・葉育銘にも勝って個人優勝までなしとげた。前回世界選手権での劉家綸の活躍もそう。台湾はのればなにをやるかわからない。今回の台湾取材でみることができた王俊彦も林朝章も揚勝發もなにかを充分秘めている。

 ちなみに台湾は今回の世界選手権で優勝すれば国家より60万元(ニュー台湾ドル)の報奨金があたえられる。これは昨年のアジア五輪や、前回の地元開催の世界選手権にくらべると、5分の1でしかないが、日本円にして200万円強であり、魅力的な多額であることは間違いない。