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打球速度に関する報告

投稿記事Posted: 月 1 02, 2006 6:31 pm
by 楠堀誠司
楠堀と申します。大学院学生で、ラケットスポーツの研究に従事しているものです。
「ソフトテニス野郎」さんが、以下のようなことを書かれていました。

速さでは硬式にひけをとらないし(何かの機会に科学的にどちらが速いか実験できないでしょうか)

この点に関しては、幾つかのデータと、それらの結果から考えられることがあるので、報告したいと存じます。

ソフトテニスの打球速度に関する報告は、以下のものがあります
渡辺俊彦・池上康男(1977)
テニスの科学(1)-軟式と硬式の力学的相異-。新体育47(8)、674-676
渡辺らの報告によると、ソフトテニス、テニスのフォアハンドにおけるインパクト直後の打球速度は、それぞれ45.7m・s-1、31.8 m・s-1、バックハンドではそれぞれ36.1m・s-1、27.8m・s-1となっていて、ソフトテニスの打球速度の方が高いように思われます。
 私がもっているデータでも、ソフトテニスでは41m・s-1くらいです。硬式テニスでは報告が多いのですが、35m・s-1以下となっているようです。
 しかしながら、これらの結果には、打球する前の送球されたボール速度自体の高低が、打球速度に影響すると考えられるので、絶対的なものとは考えられないと思われます。おおむね、打球直後は、ソフトテニスの方が速いであろうということは言えるかと思います。
  次に、ゲーム中のグラウンド・ストロークにおけるインパクトからインパクトまでの時間を計ってみました。これは簡単なことですので、皆さんもやってみて下さい。通常の家庭用ビデオでは、1秒間に再生されるコマ数は、30コマですので、インパクトしてからインパクトするまでのコマ数を数えれば、簡単に測定できます。
 この結果では、硬式テニスの方が時間間隔は短く、女子では統計的に差がありました。この結果もしかしながら、コートサーフィスの影響をかなり受けますので、一概に比較は出来ないのですが、当方が比較したものは硬式はハードコート、ソフトは砂入り人工芝コートでした。一応これらの結果を受入れるとして考えてみると、やはりソフトテニスのボールは、打球直後は速いのですが、インパクト時にはかなり減速されると思われます。インパクトからバウンドまでは両者にそれほどの差はなかったので、ソフトテニスの場合、バウンドによる減速がかなりの比重を占めます。恐らくネット上を通過する時点ではソフトテニスの方が速いのかもしれませんが、データはありません。

 以上のデータから言えることは、ソフトテニスの方が速いとは言えないということでしょうか。昨今の硬式テニスの技術的進歩(例えばバックハンドによるライジングショット)などからみても、ソフトテニスはうかうかしていられません。先日「テニス学会」というところに行って参りましたが、硬式テニスの関係者の方は、ソフトテニスのグリップとバックハンドの打ち方に随分と興味を持っているようでした。硬式テニス界では、バックハンドの高い打点で打てるかどうかが世界へ飛立っていくためのひとつの目安になっているようで、そのためにはソフトテニスの技術に学ぶ必要があるのではないかと言われていました。この話を聞きながら、当方は少しばかり寂しくなりました。 皆様の御意見が活発になることを期待しております
 質問などございましたら、御連絡下さい。ソフトテニスのデータはまだ少ないのですが、少しずつ開示しようと考えています。

投稿記事Posted: 月 1 02, 2006 6:31 pm
by au
興味深い報告ありがとうございます。
かねがねソフトテニスと硬式テニスのスピードの比較には興味がありました。
私自身は両者を比較してソフトテニスのほうが速いと感じてきたのですが、世間の一般的な認識は硬式のほうが速いという認識のようです。なぜなのかはわかりません。ソフトテニスのトップレベルのスピード感は他に類例のないものでこれをもっとアピールできればいいですね。

投稿記事Posted: 月 1 02, 2006 6:34 pm
by Aka_Koumori
> 渡辺らの報告によると、ソフトテニス、テニスのフォアハンドにおけるインパクト直後の打球速度は、それぞれ45.7m・s-1、31.8 m・s-1、バックハンドではそれぞれ36.1m・s-1、27.8m・s-1となっていて、ソフトテニスの打球速度の方が高いように思われます。


 「m・s-1」の単位は秒速という意味になるのでしょうか?
 すると、秒速45mというのは、時速で言えば約160km/時となりますが、
 凄い速いですね。(計算、違ってるかな??)


>  しかしながら、これらの結果には、打球する前の送球されたボール速度自体の高低が、打球速度に影響すると考えられるので、絶対的なものとは考えられないと思われます。おおむね、打球直後は、ソフトテニスの方が速いであろうということは言えるかと思います。


 硬式テニスの方が終速、つまり打球するその時のボールスピードが高いでしょうからね。
 ソフトテニスは、どんなに速いボールを打っても、かなり速度が落ちるように思われます。

次に、ゲーム中のグラウンド・ストロークにおけるインパクトからインパクトまでの時間を計ってみました。これは簡単なことですので、皆さんもやってみて下さい。通常の家庭用ビデオでは、1秒間に再生されるコマ数は、30コマですので、インパクトしてからインパクトするまでのコマ数を数えれば、簡単に測定できます。
>  この結果では、硬式テニスの方が時間間隔は短く、女子では統計的に差がありました。


 インパクトからインパクトとはどういう意味ですか?
 テイクバックからフォロースルーということでしょうか?

昨今の硬式テニスの技術的進歩(例えばバックハンドによるライジングショット)などからみても、ソフトテニスはうかうかしていられません。先日「テニス学会」というところに行って参りましたが、硬式テニスの関係者の方は、ソフトテニスのグリップとバックハンドの打ち方に随分と興味を持っているようでした。硬式テニス界では、バックハンドの高い打点で打てるかどうかが世界へ飛立っていくためのひとつの目安になっているようで、そのためにはソフトテニスの技術に学ぶ必要があるのではないかと言われていました。この話を聞きながら、当方は少しばかり寂しくなりました。 皆様の御意見が活発になることを期待しております


 ソフトテニスでも、硬式テニスのサービスから知見を得ようと考えている方々が増えてきました。

   http://www5a.biglobe.ne.jp/〜k-naka/softtennis/softtennis_technic_over_basic.html

 僕は、大変良いことだなと思います。
 もっとも、ソフトテニスのバックハンド、つまりウエスタン系のグリップでのバックハンドは、
 何もソフトテニスの専売特許ではなく、過去の選手でそのような選手がいたことを聞いたことがあります(下記リンク参照)。

   http://opus111-web.hp.infoseek.co.jp/soft-tennis/encyclopedia/ka/grip.htm

 ソフトテニスから学ぶというよりも、硬式テニスの場合は歴史を振り返ることになっているだけなのかもしれませんね。

投稿記事Posted: 月 1 02, 2006 6:36 pm
by 楠堀誠司
「m・s-1」の単位は秒速という意味になるのでしょうか?

その通りです.m/sの方が分かり易かったでしょうか.この書き込み自体がか
なり以前(4年前?)のもので,私の柔軟性がなかったなと思います.

次に、ゲーム中のグラウンド・ストロークにおけるインパクトからインパクトまでの時間を計ってみました。これは簡単なことですので、皆さんもやってみて下さい。通常の家庭用ビデオでは、1秒間に再生されるコマ数は、30コマですので、インパクトしてからインパクトするまでのコマ数を数えれば、簡単に測定できます。この結果では、硬式テニスの方が時間間隔は短く、女子では統計的に差がありました。インパクトからインパクトとはどういう意味ですか?テイクバックからフォロースルーということでしょうか?


これは,ある選手のインパクトから対戦相手のインパクト(ベースライン・プレーヤー同士のラリーです)までの時間のことを指しています.
個人的な見解をあえて書けば,テニスもソフトテニスも様々な要因からボール速度は上がっているように感じています.
ただ,かっての名選手の逸話(サーブがフェンスを越えていったとか)もかなり信憑性があって,比較できないのが残念です.
ただ,かつての名選手といわれた選手達は,どうもコントロールに優れていたような気がしています.
最近そのことを強く感じることがありました.
ラケットが木製であったこともあって,ラケットで確実に打球するという技術が彼らには備わっていたのですが,現在のラケットでは,多少スウィートスポットをはずれてもボールは落ちてくれるので,若い世代の選手の技術が低下しているのかと,愕然とすることもあります.

これに関連して書けば,ボールとラケット・人系(ラケットと人をひとつのものとして考えたシステム.人の体の全身を考えるのは難しいので,上腕部だけでもいいと思います)の衝突の際に運動量が保存され,それにしたがってボールの初速度が決定されるというモデルを考えても差し支えはないのですが,実際にはボールの回転量がいと運動量は鉛直方向の運動量とボールの回転量エネルギーに変換される割合が高くなり,ボールの水平方向の初速度,つまり、ボールが相手方向に飛来していく初速度が低下します.
一言で言うと,ボールの回転量が多いと,速いボールは打てません.
またソフトテニスの場合,空力学的な影響を大きく受けるので,回転量が多いのは不安定な要素を生みだします.
これらのことに対する理解があまり得られていないようで残念です.
韓国選手達のフラットでネットすれすれの打球をみていると,うらやましくなります.