プロローグ Taiwan 2005.10.16-20
vol.1の楊勝發(ヤン・シェンファ 台湾 中国文化大学)のフォアハンドはたいへんに好評であり、今回紹介の画像は早い段階で用意していたが、vol.9には別の画像を準備中だった。というのも、全体としてグラウンドストロークに片寄りがちだし、バランスをとる意味で、ネットプレーを紹介するつもりだったのだ。また楊勝發以外にも紹介したい選手はたくさんいる。しかしそれらの画像も準備できたものの、解説にてこずっているうちに、台湾全國運動會(国体)の取材があって、中断してしまう。
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94全國運動會(2005台湾国体)での楊勝發。 |
その台湾全國運動會で私がみたものは、さらに強大、そして巨大になったヤン・シェンファの姿だった。取材の4日間もう圧倒されっぱなしであった。
なにが凄いのか?それを言葉で説明するのはむずかしい。その才能を本人自身が扱いかね、テニスをどう着地させていいかわからない、とにかく、がむしゃらに、しゃにむに打つしかないんです、とでもいいたげな一途なテニスをみせていた。と、こう書いていくとなにやら汗臭く土臭い選手に思われるかもしれないが、全然違う。これほど垢抜けた選手も私は知らない。好青年を絵に描いたような風貌、シャイなその態度、洗練されたマナー、ひたすら内面と対話対決するようなプレー振り、どこもかしこも素晴らしい。なんでソフトテニスなのだろう、とさえ、思う。彼を大きさをソフトテニス界は受け止めきれない、と妙なことまで考えさせられてしまうのだ。まさに僕は彼に「惚れている」わけだ。
そんなこんなで、次ぎは楊勝發でいこう、と発作的に僕は考えたのだ。
ここで紹介する画像は前回紹介した画像よりもさらに二年前2003年のヤンの姿である。当時彼は若干20歳。国際大会にデヴューを果たした年だった。國別対抗の優勝、個人戦ダブルスでは花田・川村を破り、準決勝では李源學・劉永東(韓国)と対戦、ファイナルで惜敗している。
さて以下の文章は二ヶ月ほど前に書いたものだ。直そうかと思ったがそのままのせる。
(--ここからが本文だ!!--) Hiroshima
2003.11
VIR.0001で紹介したヤン・シェンファ(楊勝發)のフォアハンドが大好評につき、第二弾をおとどけする。PART1はあくまでウォーミングアップラリーのものであり、緩いボールをゆったりとかえした、いわば朝飯前?のプレーだった。速いボールを打つところがみたい!との要望は当然である。
今回の動画も練習中だが、ずうっとシリアスであり、相手から打たれた快速球をさらに鋭く打ちかえしたもの。順クロス←→順クロスのラリーである。打点は腿の高さくらいであまり高くないが、バウンドの頂点をとらえており、つまりライジングである。だいたいクレーコート上の速いシュートボールというのはこれぐらいしかはずまない。つまりこれが一番高い打点なわけである。いわば最多価格帯とでも言うべきポイントであり、つまり重要な打点でもある。
VIR.0001にくらべて表情もきびしく、集中している様子は本番さながらだが、全体からは力みは感じられず、やはりリラックスしたスイングがすばらしい。集中することとリラックスすることは矛盾するようで難しく思われるかもしれないが、両立できる。というかそれができることがいいプレーにつながる。集中したプレーは緊張感を生むが、プレーヤー自体が緊張するわけではない。そういう人もいるが・・・それではいいプレーはできない。集中すればするほどリラックスできるのが一流の証かもしれない。緊張は力みをうみそれがミスにつながる、プレーの質を下げるわけだ。
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キム・キョンレン(韓国 安城市庁)のテイクバック。グリップは違うがテイクバックは同じといっていいだろう。だがグリップの違いでその後のスイングは違ってくる。クリック |
スイングは典型的なサーキュラーモーションである。ただフォワードスイングからフォロースルーにかけてのスイングは直線的であり、セミサーキュラーといえるだろう。
特異にみえるテイクバックも、そのサーキュラーモーションのバリエーションのひとつであり、かのロジャー・フェデラーが同じタイプである。ふるくはボリスベッカーもそうであり、あの松岡修造はジュニア時代、これを100倍?ぐらい強調したモーションのフォアハンドをおこなっていた(すごくカッコ悪かった)。ソフトテニスでは韓国女子のホープ、キム・キョンリン(金環連 安城市庁)がこのタイプ。同じ韓国の世界最速の男チェ・チフン(崔志勲 ソウル市庁)もこのタイプである。
踏み込みは打球方向にたいしてややオープン、セミオープンスタンスといえるだろう。実戦的なスタンスである。
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これは別テイク。比較してみるとおもしろい。 |
左手の、(テイクバックと連動した)抱えこむような、使い方は個性的だが16コマ以降のバランスが美しい。(16コマ以降は)理想的な使い方だろう。20コマめくらいからボディーターンがはじまっている。ぐぐっと体重が左足にかかり、肩がターン、ややおくれてラケットが鋭く振られていくが、上体は全くつっこまず、頭がぶれていない。ボールをしっかり注視しているのがはっきりみてとれるだろう(これが頭のぶれをふせいでいる)。ボールをしっかりみることは基本中の基本であり、初心者でも世界チャンピオンでもそれは変わらない。絶対の原理である。意外にこういうことをおろそかにしている人がおおいのに驚くことがある。一流はボールを見ないで打っている、なんて真顔で言う人がいるのには困ってしまいます。一流こそボールをみている。ここをおろそかにすると元も子もなくなる、本末が転倒してしまうのである。
フォワードスイング、インパクト、インパクト後にかけてラケットがぐんぐん加速されていく様子が実に素晴らしい。
おおきなフォロースルーも模範的、彼の球筋はそれは美しく、独創的ですらあるが、それが目に浮かぶような滑らかで美しいスイングに仕上がっている。
打球完了後、即刻、左手を添え次の打球準備に移るが、これは彼の受けてきたコーチングのレベルの高さ、厳しさを伝えている。
全体のリズムも素晴らしく、上手くなりたい人はいやになるくらいみてください。グリップはセミウエスタンフォアハンド。しかもかなり薄め(つまりイースタン寄り)。身長は180センチ強。
2005東アジア五輪の予選で李佳鴻(リー・チャーホン)と組み、ダブルス予選で二位(一位は王俊彦・方同賢)。二年ぶりに代表に返り咲いた。本番での活躍が楽しみだ。
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