キョンハンの華麗な、というしかないフォアハンドのドライブボレー。彼が稀代のテクニシャンであることは何度も書いてきた。右方向への難しいボレーだが、実に美しく同時にダイナミックだ。テイクバックでのリストの柔らかい使い方はまぎれもない韓流、しかしボレーでこれをやるのはキョンハンだけであろう。グリップは大きく包み込むように握ったセミウエスタン。ヨンドンと酷似した模範的なボレーグリップ。正確で丁寧に処理したインパクト、美しすぎるフォロースルー・・・・
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2009年大統領旗(聞慶市)でのキムキョンハン。フォアボレーの神様といっていい。 |
韓国の偉大なスリートップ。この至宝3人でアジア競技大会団体2連覇を達成(1998、2002)。しかし時の流れは止められない。ヨンドンが去り、ヒースーが去り、そしてとうとうキョンハンが去った。2000年の最初の訪韓以来、ほぼ毎年のように韓国代表決定戦を魅入られるように取材してきたが、今年(2011)の予選には初めてこの三人が一人も参戦していなかった。とうとうくるときが来たのである。----- 余談だが、予選会がつまらなかったか、といえばそんなことは全然なくて、むしろいつも以上に圧倒されてしまった。これはほんとたいへんなことである。プロフェッショナルの凄みである。----- とはいえやはり寂しさはやはり隠せない 。隠しようがない。
中堀の引退、高川の代表落ち、3トップの消滅・・・・生きる希望さえ失いそうである。
ここでのプレーは2008年11月末にソウル市郊外の農協大学コートで開催されたNH2008国際大会でのもの。アジア選手権を一ヶ月足らず前におえたばかりでインドアシーズンのない韓国はすでにオフにはいっていた。ということもあってか非常にリラックスしたキョンハンのプレーがみられた。それはダブルフォワードへのチャレンジでもあったのだが、チャレンジというよりはダブルフォワードを楽しむといった風情でもあり、高度に訓練のいきとどいたスキルを、2006年のアジア競技大会予選以降、封印していたダブルフォワードというフォーマットが再起動可能かどうか、テストしているようにもみえた。結果的にこれが最後の国際試合となったのである。 (韓国国内では2010年までプレーを継続) |