近年稀に見るといっていいほどおもしろくレベルの高い東京インドアだった。男子の話しである。プレヴュ−でも名をあげた三組、篠原・小林、中堀・高川。菅野・佐々木の力が際立っていて、その凛としたゲーム振りは会場に緊張感を漂わせ、あきさせない。ざわつくことのおおいこの大会だが、ほぼ9割がたうまった客席も、例年になく、静かに集中してみている感じである。
篠原・小林は出足から圧倒的攻撃力で8ゲーム連取、一気に決勝ラウンド進出をきめる。むろんダブルフォワード。しかも迷いのないもっとも過激といっていいそれである。圧倒的ダイナミズムでぐいぐい惹き付ける。二人ともレベルアップが著しい。特に今回は小林の好調が目につく。篠原のネットプレー技術のレベルアップも目を見張るばかりである。
新天皇杯チャンピオンの菅野・佐々木。あまり調子のいい感じでもないのだが、新しいスタイル、つまりダブルフォワードに果敢にチャレンジする意志の強さがすばらしい。菅野はセカンドでもヘヴィ−スピンのカットサーブでネットダッシュをしかける。傷だらけになりながらも果敢に前線にあがるその姿はダブルフォワードの原点であり、まだ課題はたくさんあるものの今後がおおいに楽しみである。もっとも菅野のネットプレーのセンス、技術は抜群であり、あとはスタイルそのものの技術の取得、つまりダブルフォワードのコンセプトのより深い理解と取得がのぞまれる。彼等は中堀・高川、篠原・小林の2組にともにファイナルでやぶれるが、学生2組は問題にしていない。問題といえば学生のほうで4組を大量出場しながらまったく目立つことがなかった。テニスは実に悪い意味で保守的で、代表達のぴちぴちとした活のいい新鮮さを感じるテニスとは好対照。雁行スタイルがわるいとかではなくて、単に弱かった、そんな感じ。国際大会を経験しているのといないのでは、こうも違うのかと感じ入ってしまったものだ。
中堀・高川は前日の練習から好調。スタイルは雁行陣ベースで一見オーソドックスなもの。しかし、彼等はダブルフォワードを経てきており、保守的なそれであるはずがない。厳しい、ぜい肉のとれたシャープな雁行陣なのである。まだなにか先があるぞ、と予感させられたが、それはほんとに凄いことだと思う。
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