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ダブルス決勝での劉永東。李源學がラリーで押し込んだボールをらくらく決める。この決勝はまれにみる大接戦、大熱戦。風が強かったのが惜しまれるが、記憶にながく残る大試合であったことは間違いない。再びこのようなゲームをみることがあるだろうか。今大会で韓国に対抗できるのは韓国だけだった。
 フォローに走ることができない理由は幾つか考えられる.
 金煕洙劉永東は,二重モーションと呼ばれる動きを採用していた. 特に金煕洙はそれを多用していた. 上半身だけを左右に揺さぶるのではなく,相手ベースライン・プレーヤーが打球する直前の早めの段階で, ポーチ・ボレーに動く方向と反対側の脚に重心を移すような動きをつけ, その状態からポーチ・ボレーに出るのだ. しかもそれがよくポイントに結びついていたし,二重モーションを使ったときにパッシング・ショットを浴びるような場面を見ることがなかった. 対戦した多くのベースライン・プレーヤー達は,この二重モーションを見抜くことができていなかったのだ. いわゆる「誘い」で使われることは少なく,攻めのポーチ・ボレーで使われていたが, 恐らく対戦したベースライン・プレーヤー達には,守っているように見えていたのではなかろうか.

10年程前の韓国前衛のイメージしかないひとは彼のダイナミックさは想像もできないだろう(以前もレベルは高かったが地味だったのだ)。劇的な進化、変化である。ルール変更に起因する突然変異か?彼の出現、存在がソフトテニスのトップレベルをささえているといっていい。
 韓国のネット・プレーヤー達がそれほどうまく使いこなしていたことは,明らかであった. このモーションはミスに繋がるようなこともなく, 近年日本のネット・プレーヤー達がこのようなモーションを採用していない状況とは対照的だ. 二重モーションを使ったからといって,ポーチ・ボレーのスピードが落ちるような印象はなかったし, スタートのタイミングは見誤るどころか,寧ろぴったりと合っていた. だから二重モーションは,韓国選手にとっては良いパフォーマンスに繋がっているように考えられた.
 韓国選手のこの二重モーションを支えているのは,スムースな体重移動とそれに伴うスタート技術,それに,それらをこなし得るだけの基礎体力であることは間違いないようだった. 日本選手が二重モーションを採用しない理由はなんであるのか判然としないが, 日本選手の体力レベルが低くて結果的にパフォーマンス低下を招くと考えられるのであれば,それは非常にネガティブに聞こえる.

ミックスダブルスでの劉永東
 劉永東の場合,フォローに走られることがない理由がもう一つあるようだった.そしてそれは,彼自身の傑出したスピードによって可能となっていた.時折,中途半端に思われるポジションからポーチ・ボレーに出て決めてしまうことがあった.観戦している者にとっては,それは予期できないポーチ・ボレーであった.既に書いたように,ポーチ・ボレーが決まり出すと,観戦者にもわかるような雰囲気を体中いっぱいに漂わせてポーチ・ボレーを行っていたが,それとは違った雰囲気を醸しながら,やや遠目に思えるポジションからスタートするのだ.そのような場合でも,ポーチ・ボレーを決めることの方が多かったが,流石にスピードのある劉永東 も早めのタイミングでスタートを切らなければならず,結果的に相手ベースライン・プレーヤーのパッシング・ショットに繋がることがあった.しかしスタートが早い分だけ李源學のスタートも早く,流れるようなポジション・チェンジとなってそのままラリーが続けられるということが多かった.

男子ダブルス決勝での李源學・劉永東。
 恐らく韓国国内ではそうしたポジション・チェンジは極当たり前のことであって,ゲームにさしたる影響は与えているようには感じられなかった.またそんな時には,李源學にしても体勢を崩してしまうことがあったが,体軸を持ちこたえながら打球し,ボールを吹かせることなくラリーが続く現実は,またしても韓国選手の基礎体力レベルの高さを見せつけられているようなものであった.そうした遠目からのスタートは,あたかも相手ベースライン・プレーヤーを試しているかのように思われたが,やはり劉永東 のボレーの餌食となっている場合が多かった.このようなとき,相手ベースライン・プレーヤーが打球する直前の視覚に劉永東の姿は映っていないかもしれない.打球してからはじめて,その存在に気がつくことが多かったのではないだろうか.

 さらに,体の身近なボールにも良く対応していた.だから,相手ベースライン・プレーヤーにしてみれば,自分が打つべきコースは見えるのだが,そこに打ってしまうとボレーされるし,かといって劉永東の体の近くやミドルなどにコースをずらすことができたとしても,それも非常にリスクの高い行為であったに違いない.----->