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| 熊本での予選会より中堀のサーブ |
しかし,もう一つの重要な事実が忘れられていたのかもしれない.
高速サーブを可能にする理論的背景として,「運動連鎖(キネティック・チェーン)」が日本では重視されてきた. 下肢によって地面を蹴る地面反力がストロークにおける大きなパワーの源であると考えられているが,運動連鎖とは,
この地面反力によるパワーを如何に効率よく上肢に伝え,ラケット速度を速くするかということである. 地面反力は,下肢から体幹部に伝わり,その後上肢,ラケットへと伝わるが,
体幹部を大きく捻りながら弓のようにしなることで効率よい上肢への伝導を可能にし, その後の上肢では,肩,肘,手首,ラケットヘッドへと,身体の近位から遠位に向かって徐々にその速度を高めることで,
ラケット速度を速くすることができるというものである.
その過程で,膝を深く曲げ,体幹部を大きく捻りながらしならせることで,下肢や体幹部の大きな筋群のパワーをサーブに反映させることが重要とされてきた.
そしてこの理論自体に間違えはなく,大きな筋群の活用は,傷害の防止という視点においても非常に有効なのだ.
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| 2002.4アジア五輪韓国国内予選での金煕洙バズーカ |
これに対して,忘れられていたもう一つの理論は,「筋の弾性エネルギーの利用」であろう.
これは,‘70年代にカエルを使った研究から見いだされ,今なお研究が進んでいる「筋の伸張―短縮サイクル(stretch―shortening
cycle)」に関する研究成果のひとつである.
一般に筋は,伸び縮みするバネをモデルにして扱われる. そしてバネは,伸び縮みすることで「弾性エネルギー(elastic energy)」を生じる.
高校の物理の授業では,「バネエネルギー」と言われていたと記憶している. そして,このことは筋も同様である.
ところが筋の場合,伸び縮みによって生じた弾性エネルギーは,時間とともに消滅していくという性質を持っている. 例えば,肘の曲げ伸ばしについて考えると,肘を曲げた状態から伸展させ,その後屈曲させた方が,
最初から肘を伸ばした状態から屈曲させた場合よりも,より大きな力で屈曲動作ができるのだ. こうした現象は,多くの場合「反動」を使った動作として理解されている.
例えば,野球のバッティングでは,バットを一旦後方に引いてからスウィングが行われる. この場合,後方にバットを引くことで体幹部や上肢筋群が伸張し,弾性エネルギーが生じるのだ.
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| 高川。彼のサーブも凄い。特に東アジア五輪の金耿漢戦でみせたそれは掛け値なしのとんでもなさだった。近年、国際大会の場においてはサーブの多様化、高速化がめざましい。ソフトテニスは偉大なプレーヤ達の手によって確実にlかわりつつあるのだ。。 |
そこで注意しなければならないのは,筋に特有の弾性エネルギーの消失を考慮することだ. 筋の弾性エネルギーは時間とともに消失してしまうので,引き延ばした筋を素早く短縮させる方向に動かさなければ,大きな力を発揮することは容易でなくなる.
だから,肘の伸展―屈曲動作についていえば,肘関節を伸展したままにしておけば,伸展によって得られた弾性エネルギーの消滅がすすみ, 屈曲時に大きな力を発揮することが困難になる.
バッティング動作でいえば,後方に引いたバットを停止させる時間が長いと,スウィング速度を速くすることは困難になるのだ. だからテニスのグラウンド・ストロークについても,早く引きすぎてしまうとそれだけテイクバックした状態で長い間ラケットを停止させることになり,
速くラケットを振ることは困難になってしまう.
つまり,日本人好みのゆったりとしたフォームでサーブを行う動作は,大きな筋群の利用は可能になるが, その反面筋の伸張にともなって生じる弾性エネルギーを使ってラケット速度を速くすることを困難にしていると推測できるのだ.
クイック・モーションで行われる韓国選手達の高速サーブは,正にこの筋の弾性エネルギーを使っていたと思われた. そしてそれを可能にしていたのは,近年進んだラケットの軽量化と,韓国選手の筋力の強さであったことは疑いようがないように思われた.
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