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| 男子シングルス決勝、手前 金煕洙、向こうが金耿漢。テクニカルな面ではまちがいなく最高峰、背筋がさむくなるような鋭い切れ味の技、その連続であった。しかしそれが熱狂につながらないのだ。 |
ところでこのダブルスの前に,実は男子シングルス決勝が行われたのだ.金煕洙は現世界チャンピオン金耿漢(キムキョンハン)と対戦した.
この二人は,予選から別格の強さを見せていた.準決勝では金耿漢は廖南凱(リャウナンカイ),金煕洙は中堀という,二人とも今大会を代表するベースライン・プレーヤーに勝っての二人の決勝進出であったが,それがシングルスにおいてネット・プレーヤーが優勢であることを物語っているわけではなくて,二人が今大会における傑出したシングルス・プレーヤーとしての証明であるように思われた.地元の利があるとはいえ,韓国の二人のネット・プレーヤーが決勝に進出したことを見て,あらためてその実力の高さを知る思いだった.
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| 男子シングルス決勝を終わって |
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| 決勝終了後、挨拶を終えた金煕洙はベンチにうつむいたまますわりこみ、退場行進も拒否。動こうとしなかった。 |
ところが,始まった男子シングルス決勝は,空虚なポイントのファイナル・ゲームまでの積み重ねであった.そしてそのことは,観衆自身が証明していた.大きな歓声が湧くこともなく,惹き付けられるように見ているものは少なかった.
さしたる山場もなく,金耿漢の勝利で終わった.それは「ゲームをこなしている」といってもいいように感じられ,私たちの期待は完全に裏切られていた.だが,金煕洙はただ憮然とした堅い表情を崩すことがなかった.
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| 取材を受ける黄晶煥 |
個人戦ダブルス決勝後,金煕洙のペアであった黄晶煥は,姿勢よろしい兵隊よろしくマスコミの取材を淡々と受けていた.その姿に僕は言いようのない違和感を覚えた.黄晶煥は国際大会個人戦で初の決勝進出であったから,彼自身は二位という結果に十分に満足していたのだろうか.試合後の金煕洙と黄晶煥から感じられる雰囲気に,かなりの温度差を感じてしまったのは僕だけだったのだろうか.
ダブルスでもミックス・ダブルスでも金煕洙は自らの敗退が決すると,テニス・コートに落ちていたボールをうなだれながら拾っていた.その姿は,2000年秋に佐賀で開かれたアジア選手権大会個人戦ダブルス決勝で,日本の平山・土師組の前に屈したときと全く同じ姿であった.
ファイナルで勝った平山と土師がラケットを放り投げ,大喜びしながら駆け寄り抱き合おうとしている正にその時,金煕洙はネット近くに転がっていたボールを,うなだれながら拾っていたのだ.そしてその金煕洙の姿は,勝敗を決した最後のボールを自ら拾うことで,自らの敗退を受け入れようとするアスリートの姿でもあった.敗退したという事実に対して,二人の間にはかなりの乖離が存在していたようだった.それが,今回のシングルスでは違っていたのだ.シングルスでの敗退を受け入れようとしている姿であるとは,到底感じられなかった.
そしてさらに,今回のシングルスでの敗退が持つ意味は,ダブルスでのそれとは異なっていたのだ.金煕洙がシングルス敗退後に見せた姿は,その敗退を受け入れようとしている姿であるとは,到底感じられなかった.
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