バズーカ分析

 ところでバズーカという呼称はこのページのプレヴューでかってにそう呼んだもので、韓国がそういっているわけではない。実はそれほどこの名前が気に入っているわけではないので、あまりつかいたくないのだが・・・ ほかにいい名前はないものか・・・最初は100メートルサーブとか、30メートルサーブとかいっていたのだが、これもよくないし・・

 『テニスの王子様』というジュニアたちに大人気のマンガがあるが、あの作者ならなんて命名するだろう。あのマンガにでてくる必殺技はそうとうに馬鹿馬鹿しいが、このサーブはそれに匹敵するバカバ・・いやもの凄さなのだ。そういえばあのマンガで波動球とかいう豪球を打つヒールがいたが、あれに近いかも。

国別対抗日本戦での李源學のバズーカ。ここで李源學は3本連続でこのサーブをいれ、すべてがエースになった。マッチポイントもこのサーブが豪快に決まり、ゲームセット。韓国がこのサーブをつかってくることはプレヴューでも書いたとおり予想がついたが、これほどまで確率がよくなっているとは驚くほかはない。

 今回の韓国メンバーでバズ−カ(サーブ)を装備?していたのは金煕洙李源學の二人だ。

崔志勲のバズーカ。威力ではダントツ。確率もいい。韓国よ、崔志勲を出してくれ!!!
今年(2002)4月の李源學のバズーカ。ラケットがまっすぐフラットにでていることがみてとれる。ただこの時点での完成度はまだ低かった。

実は劉永東もバズーカを会得しているが今回はなかった。そういえば今年の4月の予選でも全く打たなかった。しかし劉永東にはかわりに異空間スピンサーブとでもよぶべき必殺サーブがある。これは別項で。

 黄晶煥金耿漢がバズーカを打つのはみたことがない。金耿漢はシングルスの決勝ではじめてそれらしいサーブを打ってはいたが。

 他の代表クラスの選手では崔志勲が凄いバズーカを打つ。多分彼のものが一番威力がある。

 全寅修は佐賀で練習しているのをみたことがあるが、実戦ではみていない。田絃基もない。大学生クラスではほとんどがバズーカを打つし(ただし前衛はカット使いがおおい)、聞慶工業高もがんがん練習していた。

 バズーカという言葉で括ってしまうと、皆全く同じスキルで打つようなイメージをあたえそうで、ちょっと恐い。つまり全然そうではないからだ。それぞれに個性的で共通項は『凄いサーブ』それだけだ。

これは台湾カットにもいえること。それぞれ個性的なのに画一的な見方をしがちだ。気をつけねば。去年の東アジア関係の記事で韓国や台湾は決められた打ち方で皆打つという、信じられない記述をよんだが、どういう風にみれば、そう見えるのだろう。いや実際にはみているようでみていないだ。イメージにしばられて、間違った情報にしばられて、心眼がくもっているのである。虚心坦懐、心をましっろにしてみてください。とはいいながら、私自身も、韓国のテニスは、とかいったことを平気で書いてしまいがちなのだが・・・

 もっと細かく見ていこう。グリップはイースタンコンチネンタルではない。これはほとんど選手がそう。当然多少の違いはあるにせよ、やや厚めのフラットなグリップである。

 もうひとつの共通項、クイックモーションで打たれること。

この二つは共通している。

 実際の打法に移ろう。

 金煕洙はこのサーブのときだけ必ずセンターマーク付近にアドレスをとるが、崔志勲はノーマル?ポジションから打ち出す。李源學もセンターよりにアドレスすることがおおい。

 金煕洙は着地したまま、つまりジャンプしないで打つ。これは崔志勲も同じ。しかし李源學はジャンプサーブだ。この李源學は4月まではベースラインからやや離れてアドレスし、そこからおおきくステップインして打ち込むというじつに豪快な打法をとっていたが、確率はおそろしく悪かった。今回はそれが修正されていた。ステップインをジャンプインに変えたのだ。これは段階的にはまったく正しい。洗練されてきたのである。李源學のフォームはもはやノーマルなサーブのそれに近い。ただ滅法威力があるだけだ。

李源學は3年前にはステップインして打っていなかったので段階的なトレーニングを積んだ可能性もある。

バズーカ連射!!

金煕洙のバズーカ。李源學よりもボールをため込んでいる、つまり球離れがおそい感じで打っている風でもある。

 金煕洙李源學は打ち方がまるで違うのでボールの質も全然ちがう。李源學は直線的で、金煕洙は極端な変化をしやすい(しないときもある)。打ち方が違うといってもフラットという基本は変わらないのでなぜこの違いがでるのかはわからない。

 李源學金煕洙より身長が10センチちかく高いので金煕洙のようなドロップ変化はたしかに必要ないのだが(李源學は186センチ、金煕洙は177センチ)。

 極端な変化はスピンによってもたらされるものではない。ラケットをこねているのだろうか?と首を捻るひとがいたが、あくまで”フラット”なサーブだ。フラットな、つまり無回転なボールをオーヴァ−パワーで打ち出すことで、ソフトテニスボールの不安定さを最大限に引き出しているのだ。

韓国ボールは日本ボールや台湾ボールより、軽く薄いのでとくに効果があがる。つまり極端なことをいえば、渾身の力をこめてボールをたたきつぶし「あとはボールに聞いてくれ」というサーブなのだ。なんという男らしさ!!!冗談をいっているわけではない。そういう冒険心に満ちたサーブなのだ。それをあそこまでいれてしまう偉大さ。いったいどう讃えよう!!!

 金煕洙はすでに2年前に現在のかたちを確立していた。あとは確率のみが問題だったのだ。それはかなり解決されてきたが、多少威力が犠牲になっているかな、という気がしないでもない。

2年前の佐賀アジア選手権韓国国家代表決定戦シングルス(於聞慶)において金煕洙劉永東がそれぞれにバーズカを一発づつお見舞いし、韓国関係者が大喜びしたことをおもいだした。このサーブが決まるとなぜか顔がほころんでしまう。実に気のいいサーブなのだ。

 李源學が直線的といっても変化しないわけではない。むしろ変化をのぞんでいる(先にも書いた通りそういうサーブなのだ)。蔡和岑に放ったある一発なんかバウンドして目の前にくるまでどちら側にくるか判断がつかなかった。真直ぐに跳ねてくるなら、なんとかストロークして打つことも可能だが、こんな変化されると、ブロックリターンしか手はないし、韓国選手たちは実際そうしている。ミックスでの韓国同士のゲームでは女子に対してもこのサーブが使われたが、結構返っていた。決して返球不能のサーブではない。この大会にむけ、バズ−カサーブは確実にレベルアップしているが、当然リターン技術もあがってきているのである。

 ただ返すだけでは金煕洙がすっ飛んできて、今度はバズ−カスマッシュを食らうことになる。これをバズーカ連射、という?!

 また李源學中堀高川戦6Gめ一本目でフェイクバズーカを打った。バズーカを発射の気配からいきなりソフトタッチのショートアングルへのサーブを打ったのだ。劉永東が猛然と突っ込んできて(複モーション付き)、絵に描いたようなポーチバズ−カボレーを決められた。
 なんだ全部バズーカじゃないか、というなかれ。ホントそうなのです。この劉永東のポーチはあまりに凄くあまりに速く、完全に日本の息の根をとめたのである。