韓国代表考 韓国国家代表決定戦観戦記
ダブルフォワード攻略のお手本のようなテニスを見せた金昇變(キム・スンスブ)。ハードコートではどうか?
方峻煥。エデイに不覚をとったとはいえ、チェンマイでは絶対的な強さをみせた方峻煥。彼の不在でマカオでは韓国シングルスの絶対はなくなった。

 韓国代表選考は7月に行なわれた予選の結果がストレートに反映された。

 ダブルスの予選をまずおこない一位が無条件で代表に。その後ダブルス優勝者をのぞいたメンバーでシングルスの予選をおこない、やはり一位が代表に決定。あとは最終リーグに残った選手のなかから推薦されるというのが韓国の選抜方法。

 推薦で選ばれた選手はそれぞれ予選の二位であり、非常にわかりやすい選考結果である。シングルスの世界チャンピオン方峻煥(聞慶市庁)はシングルス予選3位。選んでも別にかまわないところだが、協会は非情の決断。アジア選手権ダブルス優勝の金裁福・朴昌石(大邱カソリック大学)はダブルス予選3位。こちらもそのアジア選手権の実績から選ばれるかに思えたがはずされた。

3次リーグでの金・朴(大邱カソリック大学)。大邱はこの予選大活躍で3次リーグ進出12人中5人をしめた。

 この方峻煥と金・朴の落選は大会に大きく影響しそうな気がする。金裁福・朴昌石は一次リーグで実業団組をなぎ倒し、唯ひと組全勝、優勝するだろう、といわれていた。アジア選手権でみせたダブルフォワードはさらに進化し、複雑化し、そして強さ増していた。現在世界でもっとも進んだダブルフォワードといえるだろう。クレーコートでもここまでやれるのか、と畏怖してしまうほどであった。

 最終リーグでも雁行陣の雄、李源學・金耿漢と二度にわたり対戦し、どちらも4-0と圧勝したときはその強さに背筋が寒くなる思いがした。金耿漢はこのままじゃどうにもならない、というような表情をみせたほどだった。もっとも第一線に復帰してきた金耿漢はまったくすばらしく、彼が衰えたというわけではない。李源學がダブルフォワードにがたがたになってしまったのだ。金耿漢は2003年の世界選手権で呉成栗とのペアでダブルフォワードを敢行し、日本の東・渡邊を圧倒しており、今回のテニスが注目されたが、オーソドックスな雁行陣に終始したのは意外でもあった。

 しかし、金裁福・朴昌石は(最終予選の)1stラウンドで順天市庁のベテラン金・盂(キム・ウ)に競り負け。2ndラウンドでは、決定戦に進出、キムスンスブ・ヤントンフン相手に終始ゲームをリードし、ほぼ代表の座を決めたかにみえたが、ベテランペアに逆転負け。ここは金・盂もキムスンスブ・ヤントンフンもすばらしかった。ダブルフォワードはこうやって攻めるのだよ、というお手本のようなテニスであった。しかし、だ、コートはクレー(レッドクレー)である。ハードなら逆の結果がでたのではないか、という感をぬぐいきれない。

 方峻煥もそう。彼は(シングルス予選で)チェ・ボンコン、ボエ・ウォンソンとの直接対決で、火のでるようなラリーの末、競り負けた。ハードだったら別の結果があったのでないか。シングルスに関してはなぜいまだに5ゲームマッチなのか、の疑問もある。

 

 

 3年ぶりにみた韓国国家代表決定戦。劉永東の引退、日本ボールへの移行等、の懸念事項があり、正直なところ変質してしまったではないか、と危惧していたのだが、それは全く杞憂だった。韓国予選は以前とまったくおなじように偉大だった。とてつもなく高いレベルのゲームが連続し、瞬きする暇もないほどであった。まったく畏れ入ったというのが正直な感想である。実際に、帰国してからも興奮がなかなかさめなかったほどである。掛け値なしにこのトーナメントは世界最高の水準である。技術、パワーともに高次元の、異空間の争いが連続する。密度の濃さでは国際大会以上であるといっていいほどだ。最終リーグなど国際大会の準決勝、決勝のようなゲームが朝8時から夜8時まで連続するのである。

ボェ・ウォンソン 仁何大二年

 韓国はプロフェッショナルといっていい。選び抜かれた選手が代表をめざして日々研鑽を積んでいる。そのなかでさらに選び抜かれた6組がリーグ戦をくりかえすのだからたまらない。いやになるぐらいソフトテニスの(ほとんどの人が知ることのない)醍醐味を味わうことができる。なんと私はぜいたくな時間をすごしたことか!!

 しかし、その夢のような時間、そしてその余韻が過ぎ去り、興奮が覚めた今、冷静にみてみるとわずかばかりのなにかしらの違和感を感じるようになった。そしてそれはどんどん拡大していく。台湾、日本、韓国の3強国でハードコートで予選を行なわなかったのは韓国だけである。日本は中堀・高川、台湾では王俊彦・方同賢というダブルフォワードが優勝した。つまりダブルフォワードが勝利をおさめられなかったのは韓国だけである。なにか暗示的ではないか。しかも韓国には金裁福・朴昌石というアジア個人チャンピオンがいるのである。彼等は最強のダブルフォワードの一組なのである。韓国男子はみずからをスポイルしてしまったのではないか?

チェ・ボンクォンのバックハンド。強烈そのもの。 7ゲーム3セットマッチを戦うキム・ヒースーとヤン・トンフン。 イ・ゾンウーとキム・ヒースー。若いイにのびのびプレーさせたヒースーの手腕はなかなか。 ヤンのリバース。二種類あり、速いほうはバズーカ並みの威力とスピード、ただ確率もバズーカ並み。
キム・チウン。キム・キョンリンの猛烈な追い上げにあっているが、それがさらに彼女を向上させているようだ。落ち着きがでて韓国のエースとしての風格がある。 ゲーム中のキム・チウンとイ・ボクスン。 これは1stラウンドの決勝。1stラウンドではキムチウン・イボクスン。2ndラウンドではキムキョンリン・イキョンピョが勝った。7ゲーム3セットマッチの決定戦では2-0でキムチウン・イボクスン。 キム・ヨンスク。バックハンドは全盛期そのままの素晴らしさ、いやそれ以上だが、フォアは狂ってしまている。フォアハンドの難しさを感じる。
キム・キョンレン イ・キョンピョ

 女子は釜山、広島の連勝以降、有力選手の引退が相次ぎ、大幅なレベルダウンがあった。とくに昨年はほとんど機能していない学生界から、むりやり選手をいれるということをやったので、おちるところまでおちた感があった。

 韓国女子の現在の問題点は前衛力であって、やはり金明希(キム・ミョンヒ)の引退が大きい、と感じる。しかしだ。それでも国別対抗戦は日本と3番勝負、個人戦ダブルス決勝は緊迫していたのである。昨年のチーム力は最低だったが、そこから悪い点をとりさり、最強だった2003年のチームから補強したという感じなのが今回の代表チームである。

 前衛力という意味では昨年とは変わらないが、後衛は日本以上といえる布陣になった。特に世界選手国別対抗優勝の立て役者である金英淑の復帰が頼もしい。世界選手権後一度引退し、一年間のブランクがあったので、この予選、そして長崎での全日本社会人選手権をみるかぎりではまだまだだめだが、ゲームのうまさは無類だし、バックハンドは世界最高である。彼女の回復がどれほどかが今回の韓国女子のキーだろう。

 昨年、河野に完勝して鮮烈なデヴューを飾ったキム・キョンリンは順調にのびている。社会人選手権ではいれこみすぎたのか、異常な暑さにまいったのか、あるいはその両方か、まったくいいところなく敗れたが、あの姿にだまされてはいけない。まだ若いからムラがあることは間違いないが・・・

パク・ジュンスク

 キム・チウンは昨年の前衛力に関して、経験がないですから、といっていた。たしかにイ・ボクスンもイ・キョンピョも昨年が国際大会初出場、しかも慣れないハードコート、そういう面があるかもしれない。予選をみる限りではそれほど悪くないという印象だが、なにせ男子に目を奪われながらの観戦であり、女子をみたとはとてもいえない。ただ韓国女子はまだある過程のチームであることは間違いない。

 もうひとりの選手朴鐘淑パク・ジュンスクは韓国首脳陣が絶賛する選手である。典型的な天才肌であり、あのダイ.ティンティンを思わせる。非力さも良く似ている。その非力さが日本ボールにあわずに苦労しているとキム・チウンはいっていた。たしかに韓国ボールで精密仕上がったという風なフラットであり、日本ボールを扱いかねている感じはある。しかし彼女には大統領旗ミックスダブルス3連勝という信じ難い記録があり、その秘めた能力はやはり相当なものだろう。韓国男子後衛にクレーコート上で勝ってしまうのだ。しかも3年連続で!!内二度は日本ボールである。韓国が期待するのも無理はない。

2005韓国代表寸評
キム・スンスブ 利川市庁所属。ベースライナー 国際大会には8年ぶり4回目の出場になる34歳のベテラン。1997年の第二回東アジア競技大会では団体戦優勝、劉永東とのペアで個人戦ダブルスでも優勝。しかしその後代表の座からは遠ざかった。が常に上位で活躍。小さなテイクバックからのライジングフォアハンドが武器。  
キム・チウン 農協中央会所属 ベースライナー 国際大会は三年連続三度目。けががあるということで心配されたが一位を確保。第一人者の意地がみえた。ボールコントロール、ゲームメイクは並ぶものがいない。素晴らしい選手である。
ヤン・トンフン 利川市庁 ネットプレイヤー キム・スンスブとのペアでダブルス予選一位。29歳にして初国家代表の座を手に入れた。韓国国内では常に上位で活躍していただけに悲願達成といったところだろう。優勝の瞬間は感極まるといった感動的なシーンだった。二種類のリバースサーブを使いわけるがフラットサーブもいい。縦よりも横に強い前衛。ただハードコートでのリバースサーブの効果は疑問。  
イ・ボクスン 農協中央会所属 ネットプレイヤー 国際大会は二年連続二度目。上達振りは目覚ましく、技術も動きも水準を超えているが、小柄なのが惜しい。劉永東の必死のコーチが続く。
チェ・ボンクォン 利川市庁 25才 ベースライナー。国際大会は初出場。昨年大統領旗ダブルス優勝、今年、国家代表決定戦シングルス優勝と順調にのびてきた韓国期待の選手。バックハンドが凄い。   キム・キョンリン  安城市庁所属 ベースライナー。国際大会は二年連続二度目。シングルス予選優勝、ダブルス予選二位。今年やっと20才だが、昨年は河野に完勝した。強打では韓国一。いや世界有数。むらっけはあるのは若さ?
キム・ヒースー 聞慶市庁 31才 ネットプレイヤー。国際大会は二年連続七度目。もはや説明不要のスーパープレイヤー。30才をこえたがまったく衰えは見られない。釜山以来封印していた?バズーカサーブを予選で連発。本番でもみられるか?  
イ・キョンピョ 安城市庁所属 ネットプレイヤー。国際大会は二年連続二度目。ダブルス予選二位、シングルス予選3位。後衛の揃った韓国女子の浮沈は彼女にかかっているといっていい。まずまずだとおもうが。
イ・ゾンウー 大邱カソリック大学 22才 ベースラインプレイヤー。国際大会は初出場。二次リーグで二位になり、不調だった黄晶煥にかわりキム・ヒースーにつけられた。その期待に見事に応え、もう少しで優勝するところ。最後の最後で崩れたが、若さゆえというところ。素晴らしいサーブ、柔らかくそしてハードなフォアハンド。セカンドサーブの攻撃性も韓国一。  
キム・ヨンスク 安城市庁 ベースライナー。シングルス予選二位。国際大会は二年振り二度目。2003年の世界選手権で大活躍後、結婚、引退したが一年後に復帰した。世界選手権のころの素晴らしさには到底およばないが、上手さは抜群。バックハンドは完璧。ただフォアハンドがこわれたまま。予選から3月、どこまで復活しているか?
ボェ・ウォンソン 仁何大学 20才 ベースライナー。国際大会は初出場。予選直前に大学王座のために来日。不馴れなサーフェースにまったく力をだせなかった。この予選では別人のような素晴らしさで方峻煥をやぶり決定戦に。そこでもほとんど勝ちかける。実力をつかみかねる選手。ハードではむつかしそうだが・・・   バク・ジュンスク 全羅南道庁 ベースライナー。国際大会は二年振り二度目。大統領旗ミックスダブルス3連勝の名手。劉永東とのペアで世界選手権三位もある。小柄で非力、日本ボールに苦労しているがその天才は韓国一だろう。バックハンドはキム・ヨンスク、台湾の周秋萍とならぶ世界一の完成度。