台湾国体でみた凄い奴ら 東アジア五輪 プレヴュー2
方同賢 王俊彦とのペアでダブルス予選に優勝。日本がもっともおそれる名前衛である。1998アジアオリンピック個人チャンピオン。2003世界選手権ダブルス3位。また世界選手権団体二連勝の中心選手。
黄軍晟 新人、ボールは滅法速い。パートナーがサービスのときはネットにつくオールラウンダー。ハイスクールじゃパンカップでの来日あり。
李佳鴻 上手いというよりは凄いという選手の典型だろう。スマッシュはベースラインまで、そこから涼しい顔で全力で振り切ってくる、呆れんばかりの物凄さである、昨年のアジア選手権の日本戦(対 中堀・高川)ではそんな二本のスマッシュでとどめをさした。日本では現在ありえないスマッシュだけにおそろしい。高校時代には江明宗とのペアでハイスクールジャパンカップに優勝している。
揚勝發 素晴らしい、全く、素晴らしい、彼に関してはまだあまり多くを語りたくない。静かに見守っていたい。2003世界選手権ダブルス3位。
王俊彦 現在は軍属である。国体での二冠はさすが。方同賢と組むことはエースということだが、その風格が充分に感じられる。彼に勝った日本選手はまだいない。
葉桂霖 オーヴァーヘッド系の凄さには言葉を失う。世界超一流。横の動きが課題。

 台湾男子は方同賢と李佳鴻以外の4人が180センチ以上の長身という大型チーム。身体的な大きさということでは最近の韓国がずうっとデカかったが、今回の韓国チームは全員が180センチ以下と比較的小柄?日本チームも180センチ以下ばかりなので、今回の台湾チームの大きさが目立つ。身体の大きさだけではない。チーム力もここ3年で最高だろう。団体優勝した広島世界選手権、チェンマイアジア選手権のときよりも今年のチームがいいと思う。世界選手権では方同賢以外は全員が新人という若いメンバーだった。昨年はその広島でエースだった揚勝發・方同賢ぬきのメンバー。今年はその揚勝發・方同賢がもどってきた。その変わりに昨年優勝の立て役者である趙士城、劉家綸が抜けたが、王俊彦・方同賢、揚勝發・李佳鴻の二組4人は超強力である。その存在だけでも強力なのに仕上がりが実に順調なのだ。

 先週、台湾では2年に一度の全國運動會が開催された。総合競技大会であり、台湾の国体にあたる。台湾唯一の賞金大会であり、優勝者には一人最高日本円にして100万相当の報奨金がでる(額は県によって違う)。台湾選手はなかなか本気になってくれないが、この大会は特別、国際大会並み、ことによると国際大会以上のパフォーマンスがみられる試合である。

 この国体は前回2003年に初めてみた。台湾ボールが使用されており、その迫力におどろいたが、また同時にその荒っぽさにとまどったものだ。なんなのだこれは?とあっけにとられた。

 しかし、最近の台湾の大会は日本ボールが使用されることがおおい。

 これは国際大会向けというより、それもあるのかもしれないが、コストの問題があるのだという。台湾ボールもなくなる運命にあるのだろうか、寂しい気もする。よくボールは統一されていないとだめだ、とソフトテニスの後進性を嘆く人がいるが、確かに質が低いのは困るが、規定をみたしているのなら異質のボールがあってもいいとおもう。ボールが違うのはソフトテニスだけだ、なんていうひともいるが、そんなことはない。野球も硬式テニスもいろいろなボールが存在する(オーストラリアンオープンはアップセットの多い大会で有名だがそれは暑さ、柔らかいサーフェース、そしてボールの違いに起因しているのは有名だ)。ボールの違いはサーフェースの違いのようなものだとおもう。韓国が日本ボールを採用し、台湾も移行しつつある。ボールの違いが韓国、台湾の日本とちがう強烈なテニスをつくりあげたという一面もあると思う。日本ボールの普及がその個性を奪うことにならなければいいのだが。

 この全國運動會も最近の台湾の大会の例にもれず、日本ボールが採用されるときいていた。しかし、初日(10月16日)会場についてみると、あれ、台湾ボールじゃないか、とびっくりした。台湾ボールは、オーヴァーにいえば、準硬式といってもいい硬さであり、独特の硬質の飛びが特徴である。めちゃくちゃに速いボールが飛びかっている。とくに7月から合宿しているという代表たちのラケットの振りは尋常ではない。やっぱり台湾ボールはすごいや、と呆れてみている内に、足下にボールが転がってきた。ひろいあげ何気なくマークをみると、見なれた印が・・・そう日本ボールだったのである。う〜ん、これは(東アジアは)台湾の優勝だな、とまだ、ほとんどみないうちからそう考えてしまった・・・

 もちろん、ことはそう簡単ではない。この全國運動會は画像をみればわかるとおり、アンツーカー(レッドクレー)でおこなわれている。たぶん台湾自身がここでのテニスとマカオでのテニスは全く切り離して考えてくるだろうし、異質なものになるだろうからだ。ただ仕上がりのよさ、練習量の豊富さはあきれんばかりであることが、そのストロークのひとふりで知れたのである。

方同賢
王俊彦

 全國運動會の感想をもう少し。クレーということでカットも使わない。オーヴァーヘッドの凄いフラットサーブばかりである。これまではあまり速いサーブをつかわなかった揚勝發もがんがんふってくる。李佳鴻のサーブも入ればエースみたいなとんでもないものである。セカンドも、ずどん、とくる。かと思えばアドコートで相手をコートの外に追い出すスライスサーブを丁寧にいれたりして心憎いし(いうまでもなく李佳鴻はサウスポー)、ソフトテニスでもスライスをこのようにつかえるか、と感心もした。王俊彦はなんとフォアハンドグリップでサービス(セミウエスタン)を打つが、これも凄くて、コンチネンタルがどうのこうの、なんて空しくなるほどである。

 台湾はダブルフォワードの本家本元であるが、クレーということで雁行陣が主体。しかし精神はまぎれもなくダブルフォワードであり、それは男子全員に共通するスピリット。

 昨年チェンマイでダブルフォワードの急先鋒である王俊彦に、クレーだったらどうするのか、と質問をぶつけてみたことがある。答えはクレーで同じようにやるのは難しい、というもので、理由はカットの効果が薄れる、ということだった。今大会の王俊彦は、最初のほうは比較的大人しく?雁行主体だったが、大会が進むにつれて、ぐっと前ににつめてくるようになる。それもリターンからではなく、難しい、と本人がいっていたカットサーブからのネットダッシュをこころみる。もともと王はカットの名手という感じではないが、もちろんあるレベルはクリアされている。一方でペアの方同賢は非常に安定し洗練されたカットがある。

 良質のカット、それに鋭いリターンにも関わらず、やはりクレーコート上でのダブルフォワードは必ずしも上手くいっているようにはみえなかった。台湾は先にもかいたようにダブルフォワードの本家であり、すでに歴史といっていいものがある。つまり対ダブルフォワードの戦略も進んでいるのである。しかし結果は、王俊彦・方同賢が個人戦ダブルスで優勝、多額の報奨金を得た。王俊彦はシングルスでも優勝、方同賢は方燕玲とのペアでミックスダブルスに優勝(2003年に続く二連勝)し、それぞれ二冠に輝いた。

揚勝發

 その無敵ともいえる王俊彦・方同賢が今大会でただ一度だけやぶれている。それも0-5で。相手は揚勝發・陳柏凱。台南県と台南市による団体戦での決勝のトップ(NO.1ダブルス)でのことだ。この試合の素晴らしさには言葉を失う。私は今年、日本、韓国、台湾の最高レベルのトーナメントを見て回った。そのなかで間違いなくベストのゲームである。立て役者は揚勝發(ヤン・シェンファ)、その人である。揚勝發は、ここの全國運動會、ダブルスは予選敗退で出場せず、シングルスは王俊彦にファイナル5ー7でやぶれ、5位。団体は優勝したものの、成績的には地味な印象である。しかし実際にはまさに水際立ったすばらしさであり、予想どおり、いや予想をはるかにこえて素晴らしい選手になってきたな、と感じ入るのみであった。マカオで彼が成果をあげるかどうかはわからないが、そんなことはどうでもいい。揚勝發--ヤン・シェンファ--のプレーが見られると思うだけで胸踊る気持ちになる。彼はそんな選手になってきた。

 二人の新人、葉桂霖、黄軍晟もこの全國運動會に出場。彼等はシングルス予選で勝ったことで国家代表になった。シングルス予選はダブルス予選のあとに行なわれる。ダブルス予選で結果をだし、代表になった選手はもちろんでていない。

 黄軍晟はサウスポーの後衛、葉桂霖は前衛である。ふたりとも180センチをこえる長身で台湾体育学院の学生。春に同大学を訪問したときにもみているが、その頃にくらべてやはりとんでもなく飛躍している。ただ黄軍晟はボールは滅法速いがそうとうな荒れ球である。そこが魅力ではあるが、現時点では、まだまだという感じもある。今大会でも王俊彦、揚勝發らの代表と何度かあたり、一度も勝てなかった。台南市戦での揚勝發との二度にわたる対決はダブルス、シングルスともファイナル負けであり、すばらしい好試合だったが、また自分の強さがわかってないというか勝ち方を手探りといった風である。これは揚勝發にしても同じなのだが。

 葉桂霖は前衛、しかし、ストロークが凄い。シングルスで予選で優勝したのもうなづける。これほどの強力なストローク力をもったネットプレイヤーを私ははじめてみた。スマッシュの破壊力も地上最高とも言える凄さであり、これは現在の台湾に共通していることである。

 スマッシュ力といえば韓国だったが、現在では台湾もそれに並ぶか、どうかするとやや上かもしれない。ただ台湾にせよ韓国せよこのスマッシュの物凄さは実際にみないと全く理解できない、というか想像できないもので、どうか機会をとらえて御覧になることをおすすめする。スマッシュのひとふりで虜になること請け合いである。

 この全國運動會では江明宗(2004札幌国際優勝)と組みダブルス、ミックスに出場(ペアはやはり代表の簡秋梅)。ダブルスでは林朝章・劉家綸との激戦、これも凄いゲームだった、に競り勝ち、準決では李佳鴻もとばした。決勝は王俊彦・方同賢に完敗。ストロークとスマッシュ、そしてサービスは超一級だが、ネットにつめたときのボレー技術、動きにはまだ未熟なものをかんじる。恐さはない、ともいえない。なにせこれほどの大会で決勝にでているのだからあなどれない。のせれば恐いだろう。

 凄い、凄い、ばかりでまるで失語症のようになってしまった。でもしょうがない。ほんとにすごかったのである、この全國運動會は。

PS. 台湾代表は全國運動會が終了後一日おいてマカオに出発(22日)、現地で合宿中である(韓国もすでにマカオ入り)。そのマカオで台湾チームをみた日本先発隊のS氏から「凄い」と昨日、電話が入った・・・・・

台湾女子チーム
方燕玲 周秋萍が国際大会からの引退したので彼女が台湾チームの柱だ。28才。 張淑芬 新人。シングルス予選で勝ちあがってきた。国体には不出場。サウスポー。台湾体育学院所属。 藍奕芸 国体ではダブルス、団体に優勝。前衛。 簡秋梅 新人。素晴らしい逸材だと思う。
  江婉綺 すでにおなじみ。簡秋梅とのダブル後衛になる。 李憶青。方燕玲とペアを組む。国体には不出場。写真は中山カップより。