皮肉な証明 インタヴュー編
FILE NO.0303

この画像は、実は、ウエルカムパーティから。
 ハンガリー・チームは,パーティー会場の隅から他の参加者の様子を静かに見守っていた.当初はZsuzsanna Fodorだけに取材をするつもりであったが,彼女の周りを取り囲んでいたチーム・メイトを無視するわけにもいかず,チーム・メイトにも聞いてみることにした.誰もが興味深そうに対応してくれたのが印象的であった.
 ハンガリーには日本ソフトテニス連盟を通じて人員が派遣され,ソフトテニスが伝わっていた.ラケットもその際に受け渡され,ハンガリー・チームの選手達はそれを使用していた.そして,彼女ら・彼らは,たった1ヶ月の練習でこの大会に臨んでいたのだった.
 Zsuzsanna Fodorに,「あなたのバックハンドは他のチーム・メイト達よりも技術レベルが高いと思うけど・・・」と問いかけると,はにかむようにしていた彼女に代わってチーム・メイトが,「彼女はプロフェッショナル・プレーヤーなのよ」と教えてくれた.「彼女もそうよ」と,Eszter Molnarを指していた.ハンガリー女子チームには二人のプロ・テニス・プレーヤーがいたのだ.そして二人ともWTAツアーのランキング・プレーヤーであった.2003年11月の時点で,二人の成績は表のようになっていた.
WTA(世界)ランキング
ハンガリー国内ランキング
singles
doubles
singles
doubles
Eszter Molnar
412
436
10
7
Zsuzsanna Fodor
645
578
13
9

 1996年以降両者のシングルスの成績は,Eszter Molnar,Zsuzsanna Fodorそれぞれ77勝59敗,48勝29敗という結果が残っていた.二人ともグランド・スラムの経験はないが,Tennis Europeなどの主にヨーロッパで開催されているサーキットに参加していた.Zsuzsannaは$13000の賞金を稼いでいるといっていた.Eszterは主にハード・コートで好成績を残していたのに対し,Zsuzsannaはクレー・コートで好成績を修めていた.今大会に限っていえば,Eszterはダブル・バックハンドであったことや,今大会会場がクレー・コートであったことなどから,Eszterはあまり目立った活躍ができなかったようだった.

Attila Richter

 ソフトテニスについてどう思うかと質問すると,男子選手のAttila Richterが答えてくれた.「柔らかいボールをあつかうテクニックに優れていて,とても面白い.」といってくれた.「柔らかいボールをあつかうから,フラットというコンセプトが大切だと思うけど・・・」というと,皆“Yes”といってから納得したような表情をしながら,母国語で何か議論を始めた.韓国や台湾,日本のプレーをどう思うか?という質問に対しては,「スピードがあってすごいと思うけど」と,多くの欧米人がもつのと同様の感想を述べてから,「僕達はヨーロッパで独自のものを作っていくことができると思うよ.それはアジアのソフトテニスとは異なって,ヨーロッパ・スタイルのものになっていくだろう」と答えてくれた.ヨーロッパ選手権などを開いて,もっと独自性の高いソフトテニスの創造を行うことが可能だと考えているのだった.
Zsuzsanna自身は,しかしながら,こうもいっていた.「たった1ヶ月しか練習していないのに,私は世界チャンピオンとあまり差がなかったと思うわ.勝つためには,もう少し時間が必要ね」と.強烈な言葉であった.シングルスのゲーム形態は,優勝した河野よりもZsuzsannaの方が慣れ親しんでいるとはいえ,あまりに強烈であった.彼女にとってもはやソフトテニスはチャレンジの場ではないようであった.
 「もっとソフトテニスをするの?」と問うてみると,「いや」といってから,それを取り消して,皆そろって「うん,もちろんやるよ」といっていた.明らかにリップ・サービスであった.世界大会が開催されれば,恐らく次回もハンガリー・チームは出場してくるだろう.しかし,4年に一度の世界大会しか目標となる大会がないのでは,根付くものも根付かないだろう.世界大会には観光気分で出場してくる選手がいるという,批判めいた言葉が日本人からよく聞かれるが,そういう前に観光気分にならないシステム作りが現在進行中であると聞く.

 もうソフトテニスのゲームをするZsuzsannaを見ることはないのだろうと思うと,やや寂しさを感じた.そして,「楽しんでいってください」と彼女ら・彼らに伝えて,その場を離れることにした.

 Zsuzsanna Fodorのバックハンド・イースタンは,ソフトテニスでも十分に通用することを証明していた.しかも,単に強いだけでなく魅力的であった.彼女のゲームに魅入って応援していた日本の女子中学生がいたことからもそれは明らかであった.しかし,もし私たちが彼女を単なる硬式テニス・プレーヤーとして考え,これまで世界大会に出場してきた硬式テニス・プレーヤー同様黙殺してしまうようなことがあれば,なんと愚かなことであろう.しかし残念ながら現時点では,その可能性が大きい.彼女の証明は,ソフトテニスにまだ私たちが知らない大きな可能性が残されていることを示していたはずであるが,それを探し求めなければ新しいものを作り出していけないであろう.そうなれば彼女の活躍は,とても皮肉な証明となって終わるのであろうか

Zsuzsanna Fodorのサービス動画

Eszter Molnarのサービス動画

皮肉な証明  了

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