 |
|
シングルス決勝での朴英姫
|
 |
| 大会三日め、渡邊・掘越戦での金英淑・張美花。完勝だった。 |
練習で見た韓国の朴英姫---Park Young-Hee---はボールが飛ばず,不調は明らかであった.それに対して日本の玉泉春美は鋭く深い打球を放ち,彼女が好調であることは明らかで,優勝に最も近い選手であると思われた.
昨年の釜山でもそうだった.韓国国内予選を金明希---Kim Myung-Hee---とのペアで1位通過し,実質的な韓国女子チームのエース・ベースライン・プレーヤーとしてアジア競技大会に臨んだが,朴英姫は個人戦ダブルスを日本の水上・八谷組に敗れて3位に終わっていたし,ミックス・ダブルスは劉永東にポーチされまくって敗れ,これも3位に終わっていた.シングルスで優勝を果たし,どうにか面目を保っていたが,エースとしての活躍には程遠かったのではなかっただろうか.彼女の不調,というよりは不運に近い印象であったが,エースとしての活躍ができなかったことが深く脳裏に刻まれていた.
そしてこの大会でも同じように,彼女がエースとして活躍できないことが脳裏に刻まれるのだろうかと,飛ばないボールを見ながらうなるしかなかった.やや体が重いのだろうか,体の切れが感じられない,そんなことを練習ははっきりと示していた.
朴鐘淑---Park Jong-Suk---や金英淑---Kim Young-Sook---はいかにも軽やかで,朴鐘淑は若さがみなぎっていたし,金英淑の打球は弾丸のごとく糸を引くようにベースラインに向かって飛んでいた.たった15分あまりの乱打の最中に3度もベースラインにオン・ラインする金英淑の打球は,正に爆発していた.それに対して朴英姫の打球は,サービス・ラインを1m程越えたところに落ちることがおおく,その結果伸びを欠いていたように見えていた.朴英姫と二人の若手との大きな落差に,いいしれない心のうずきを感じながら見ているしかなかった.ところが,朴鐘淑が度々フォアハンドをネットしていたり,金英淑がバック・アウトを犯しているのに対し,朴英姫はネットもアウトもせず,ひたすらストロークを続けていた.
そんな,不調でありながらミスを全く犯すことのない朴英姫を見ていると,もしかしたら彼女は,経験という財産を使ってくるのではないだろうか,そしてその結果,山場となるゲームでは練習とは全く違ったテニスをしてくるのではないだろうかと考えるようになっていた.
 |
|
釜山での朴英姫。
|
国際大会では,韓国や台湾,日本の予選を1位で通過したからといって必ずしも勝てるというわけではないし,そのような図式は存在しない.勝つためには国際大会に出場し続けることが必要であって,敗戦を経験しながら自分には何が必要であるかをつかみとることが重要だ.だから一度国際大会に出ただけではだめなのだ.数多くの敗戦から何かを学ぶことができた者こそ,高みへと誘われるのだ.朴英姫は今大会で5大会連続の国際大会出場であるが,シングルスの優勝はあるもののダブルスでの優勝には届いていなかった.昨年の釜山では最も有利な立場にいながら優勝には届かなかった.その彼女は,自身が不調であることはとうに気がついているはずであった.だからこそ彼女は,今度こそ敗戦という経験から学んだ何かを使ってくるはずであった.
 |
 |
| 玉泉 釜山(上) 高知(下) |
玉泉春美は,昨年のアジア競技大会の国内予選以降,目覚ましい活躍を続けていた.これほどまでに勝ち続けることのできたプレーヤーは久し振りの登場であったはずであったし,勝つことはできなかったものの昨年のアジア競技大会では,タイミングの早いギューンと引き締まった迫力ある打球を続けていたことに目を惹かれた.白帯へのネットを連発して昨年は負けてしまったものの,魅力あるテニスであることにかわりはなかった.そしてその後も玉泉は進化を続けていた.5月に高知で行われていた今大会の国内予選では,積極的にオープン・スタンスを使って,安定感や攻撃性の高まったテニスを披露してくれた.アンダー・カット・サーブも安定感,切れともに進化し,強力な武器になっていた.
広島入りしてからの玉泉は好調そのものであった.練習ゲームでは日本代表である金智恩と凄まじいラリーを繰り返していた.その練習ゲームでは,その凄まじさにつられるように,金智恩も自らの弱点であった打球タイミングの遅さを克服したかのようなラリーを行っていた.玉泉の打球は鋭利な刃物のような切れ味を感じさせていた.正に絶好調といえた.
 |
|
Dai Ting-Ting
|
ふたりとも,初日のシングルスから登場した.玉泉は,2回戦で中国のDai Ting-Tingと対戦した.ドライブもスライスも使ってくるDai
Ting-Tingは,不気味な存在であったはずだった.そして最初の1ポイントを奪取された玉泉の緊張感は,極度に高まったはずであった.しかし,その後はDaiのミスが続いたというより,玉泉の鋭い打球が冴え渡り,満足にラリーにならないままに4-0で玉泉の勝利となった.そのほとんどを圧倒的な打球力で支配し,格の違いを見せつけたようなゲームであった.やはり玉泉の好調さは持続されていたのだ.ただ,ストロークのほとんどをほぼ全力で打球するような玉泉の姿に,シングルスでは奇妙なほどに違和感を覚えた.7ゲーム・マッチであるとはいえ,シングルス・ゲームをこのまま続けていてはどこかで何かが切れてしまいはしないだろうかと感じたのだ.それが体力的なことなのか,精神的なことなのか,それとも全く違うことなのか,・・・.結局玉泉は,準々決勝で韓国の金英淑に勝ったものの,次の準決勝で日本の河野加奈子にストレート負けを喫してしまっていた・・・.
|