この文は多分に感傷的--センチメンタルなものだ。そのぶん、本音はでている。いつもそうだが.........

 
朝の練習での劉永東。韓国3トップが並んで練習する様は壮観だ。
『今日は僕のラストゲームなんだ。だからたくさん撮ってほしい』ヨンドンは確かにそういった。あまりに凄まじかった男子ダブルス。その翌朝、国別対抗の行われる朝、いつものように韓国の練習を撮影している私のすぐ横でストレッチしながら、劉永東(YOU Young-Dong ユゥ・ヨンドン)が、確かにそういったのだ。

 ヨンドンが引退する、という話しは広島入りした直後から耳にはしていた。ただ、こういう話しは毎回でる。実は昨年もでた。それも事情を良く知る人の口からでたものだった。しかし引退しなかった。だから今回もその類いだとおもったのだが、日を追う毎に話しは具体性を帯びてくる。いわく、すでに次のポストがきまっていて、そしてその具体的なチーム名まであがっていた。朝の練習では韓国の、いや劉永東の、密着取材という状態で、彼も我々の撮ったビデオをその場でみて、フォームをチェックするのが日課になってさえいた。彼に直接聞く機会はそれこそ、無数にあったのだが、とにかく大会がおわってからのことだ、と考えていた。

男子ダブルス決勝を終わって。アジア五輪に2度個人優勝するという偉業を達成した劉永東。がついに世界選手権個人タイトルはとれなかった。最終日の国別対応に賭けたのだが・・・

 昨年もそうだった。すべてのゲームがおわり、(日本も台湾もいない寂しい)フェアウエルパーティで酒をくみかわしているときに、おそるおそる聞いたものだ。そのときは言下に否定してくれたのだ。
 淡い期待はあった。しかし前日のダブルスの決勝に敗れ、立ち尽くし、審判に促され、ようやく、挨拶をかわし、しかしコートエンドのベンチではまたすわりこみ、タオルを頭からかぶり天を仰いだまま、決して動こうとはしなかった。ペアの李源學も声もかけることもできず、ただそばに立ちすくむだけ.........その悲愴感あふれる劉永東の姿はうわさを裏付けるに充分だった。もっとも直後の表彰式では陽気な悪ふざけばかりするいつものヨンドンにもどっていたのだが・・・

 彼は続ける
『中堀・高川とね。最後に(個人戦ダブルスの)決勝をやりたかったよ』
『コーチになるんだ。いや(現在、所属している)順天(市庁)のじゃない。張漢渉さんとこの、そう農協だ、女子コーチだよ』
と最後のところでニヤっと笑う。

 ヨンドンは大会を通してずうっと状態がわるかった。というか日を追う毎にどんどん悪化していった。単に調子わるいとか、そういうことではなく、はっきり腰と、太もも(ハムストリング)に故障を抱えていたのである。ここまでなんとか誤魔化してきたものの、ここ数年ずうっとヨンドンをみてきた目には今回の彼は痛々しいほどであった。特に完璧だった昨年との落差には目を疑うほどだったのだ。それでもミックス、そして男子ダブルスでのプレーはもはや神格化された感のある彼の名声を少なくとも、けがすようなものではなかった。もっともヨンドンを良く知るものにとってはおよそ信じ難いミスがでていたのは間違いない。

念のためにいっておくが、ヨンドンは決してミスの出ない前衛ではない。そういう低レベルの意味での完全無欠ではない。ときどき考え違いをしている人がいるので付け加えておく。