現地速報 16 | 17 | 18 | 19 | 最終順位
 

  

ブラスバンドにのって?プレーする林朝章。

朝8時試合開始の予定だったが、地元のテニスクラブ(硬式)の早朝練習が8時までの予定で、コートは全部塞がっている。あいたところから勝手にはいって練習を始める、という感じである。地元クラブはゲームをやっているので8時すぎてもゲームがおわらないところは、当然のようにおわらない。とくに問題になっている風でもない。硬式、ソフトテニス、コート整備、水撒きが8面一列のコート上で渾沌となる。そのうちとくにあらたまるでもなく、試合がスタート。各コートの開始時間もばらばらである。いちおうタイムテーブルは用意されているが、参考程度といったところ。

 一回戦がおわり、二回戦にはいるころにブラスバンドがコート上に整列して、チューニングを始める??そう開会式はこれからである。予定では10時、しかし、そう都合よくはゲームはおわってくれず、時計は10時をまわってしまう。しばらくは静かに整列していたブラスバンドだが、なかなかおわらないゲームに業を煮やしたコンダクターはついに指揮棒をふりおろし、突如、会場中に「スターウォーズのテーマ」が響き渡る。もちろんゲームはそのまま進行、という物凄い状況になる。だいたいこの会場はもともと室内コートとして設計されているので、音の反響がすごい、大音量になる。これは一種アジア的喧騒であり、僕はこういうのが好きである。しばらくその伴奏にのってゲームは進む。なぜ開会式を始めないのかな、とおもっていたが、今考えると多分だれか来賓の到着をまっていたんだろうな。突然、ゲームの進行がとめられ、開会式がはじまった。その開会式の様子は前回、写真で紹介したとおりだ。いったん試合がはじまってその後で開会式というのは昨年もそうだった。台湾では結構あることらしい。

 昨年は私とA.純氏と浅川選手の三人だけだった日本チームだが、今年はエリートだけで北本監督以下5人。その他壮年チーム多数、社会組にも参加と大選手団。

男子ダブルス

 台湾からは三組がエントリー。内5人が国際大会のゴールドメダリスト。当初エントリーしていた方同賢が選手変更で葉佳霖に変わったが、葉佳霖もゴールドメダリスト。昨年の本大会優勝の揚勝發・李佳鴻はシングルスにエントリー(結局この二人も棄権したが)。すでに書いたように台湾選手に限ってダブルスとシングルスの重複エントリーができなくなった。

 さて、右のドローで、先日説明した『雙敗淘汰制』競技法がわかってもらえるだろうか。「なんだ、ただの敗者復活じゃないか」というなかれ、ミソは二つある決定戦にある。最初の決定戦で、もし劉家綸・趙士城が花田・川村に勝っていれば、劉家綸・趙士城以外は皆2敗になり、劉家綸・趙士城の優勝がその場で決まり、決定戦2はおこなわれない。実際には、決定戦1で花田・川村が勝ち、その時点で全勝ペアなし、劉家綸・趙士城、花田・川村に二組が一敗になり、最終決定戦ともいえる決定戦2がおこなわれた。花田・川村はエントリーした台湾ペアとすべて対戦。王俊彦・葉佳霖とは一回、林朝章・魏書駿とは二回、劉家綸・趙士城とはなんと三回、つごうvs.台湾が6回もあったことになる(下表参照)。

花田・川村  vs.台湾
ラウンド      
勝部一回戦 花田・川村
4-3
林朝章・魏書駿
勝部二回戦 花田・川村
2-4
劉家綸・趙士城
敗部二回戦 花田・川村
4-1
林朝章・魏書駿
敗部三回戦 花田・川村
4-1
王俊彦・葉佳霖
決定戦一 花田・川村
4-1
劉家綸・趙士城
決定戦二 花田・川村
4-2
劉家綸・趙士城
 花田・川村は雁行陣ベースでゲームをすすめるが、当然旧態然としたそれではない。意味無く雁行陣を維持しようなんてことは決してなくなった。チャンスにためらいなくネットをとるし、無闇に下がらない。またテニスの幅はあからさまにひろがっている。とくに、これは東京インドアでも感じたことだが、ショートボール、アングルといったタッチショットが冴え、これは以前は決してみられなかったものだ。花田の本来の持ち味である強打もスポイルされておらず、いいテニスだとおもう。

 台湾各ペアは意外なことにカットサーブを主につかってきた(王・葉はオーヴァーヘッドだったが)。彼等がクレーにおいてカットを使うことは、実は、あまり無い。昨年の台湾国体でもオーヴァーヘッドが主体であった。やはり現在進行中の代表予選のことが頭にあるのか?テニスのスタイルそのものもかなりハードコート仕様。前へ前へ、である。クレーコートでの過激なダブルフォワードは、王俊彦が以前指摘したとおり、どうしても無理があり、かなり荒っぽいテニスになる。そこを花田・川村がうまくついた、というシーンがよくみられた。またその荒っぽさのなかで、川村の堅実さもおおいに光る。王俊彦・葉佳霖は熊本インドアに続いて花田・川村に敗れ、2連敗。葉佳霖の動きがかなりみすかされている風である。王俊彦・方同賢でみたかったが・・・二月に結婚したという方同賢はなにかと忙しいとのこと?!

 新ペア、林朝章・魏書駿。魏書駿ははじめてみる気がする。技術的にはすばらしいが、ゲーム的にはまだまだ。しかし技術的にすごいということが肝心である。日本においてはそこのところを間違えている人がおおい。ゲーム的にはいいが技術的にまだまだという選手があまりにおおい。この魏書駿が将来どうなるかはもちろんわからないが、経験をつみ、そして、もし幸運がおとずれ閃きが舞い降りれば、とてつもない脅威の存在となるだろう。そんな選手が台湾にはたくさんいる。

 林は昨年のマカオ東アジア五輪の代表にはなれなかった。しかし、順調に実力をあげ、迫力を増している。

 花田・川村と三度戦った劉家綸・趙士城はダブル前衛によるダブルフォワード。台湾関係者から、王俊彦・方同賢、揚勝發・李佳鴻についで、今年の三番目の実力と目されるペアである。本来なら三組同列といわれるところだろうが、昨年代表落ちしたブランクはやはり、ある。とくに劉家綸に案外なミスがおおかった。まだまだ調整段階ということだろう。趙士城も試運転な感じだが、落ち着き払ったゲーム振りはなにか風格があり、まるでベテラン前衛のようだ。昨年は今年のために休んだという風であり、そういう意味ではまだまだこれからが楽しみである。

 韓国から参加したペアは大学生(大田大学)。韓国はこの大会の直後に、今年のオープニングマッチである会長杯(兼アジア五輪一次予選)をひかえ、参加そのものがあやぶまれた。すくなくとも一週間前にはまだ参加不可となっていたが、なんとか関係者の努力でひと組だけ強行日程で参加がなった。このKIM/HAN(金・韓?)は昨年の大学2位とのことだが、前日午後の台中いりであり、その実力はちょっと計りかねる。2戦目の林・魏とファイナルだから決して弱くないのだろうが。

 大会全体のムードは、例えば四大国際大会のようなびりびりした空気感はない。リラックスしたなかに、新しいことにチャレンジする、思いきったプレーをためす、あるいはお互いの腹をさぐりあう、といった含みのあるテニスがみられ、これもまた独特の緊張感がある。やはり国際大会はおもしろい。