金煕洙
KIM Hee-Soo
(韓国)

韓国4トップのひとり。パワフルさでは韓国一、いや世界一。2002年アジア五輪ではバズーカサーブで世界を震撼させた。アジア五輪国別対抗二連勝の立て役者。特に1998年大会では劉永東敗戦のあとのNO.2シングルスに登場し、廖南凱をG1-3からの逆転したゲームは忘れ難い。個人戦では2006年現在まで無冠。これはソフトテニス界の七不思議に数えられてもいいだろう。無冠の帝王の名がもっともふさわしい名手。

1998、2002アジア五輪国別対抗優勝。1999世界選手権、2002アジア選手権,2001東アジア五輪,2004年アジア選手権国別対抗準優勝。2000アジア選手権ダブルス準優勝。2001東アジア五輪シングルス準優勝。2002アジア五輪ダブルス、シングルス準優勝。2004アジア選手権ミックスダブルス準優勝。

 
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ひとりで4本 マカオでのキム・ヒースー  

「ふたりで1本」ソフトテニスの金言のひとつである。私はこの言葉、実はあまり好きではない。いうなら「ひとりで1本」。そうすると二人で2本になるではないか?。まあそれはさておき、今回は金煕洙(キム・ヒースー)である。

 

 

ボェ・ウォンソンとキム・ヒースー

 この画像は2005東アジア五輪個人戦ダブルス一回戦vs.葉佳霖・黄軍晟(台湾)での金煕洙である。この大会での金煕洙は結果こそメダル無し(個人戦)におわり地味な印象だが、内容はよかった。ヒースーここにあり、を充分にアピールするテニスであったといえるだろう。台湾からダブルスで勝ち星をあげたのはイ・ゾンウーとキム・ヒースーのペアだけだし、王俊彦・方同賢とも2度あたり、ペアを代えながら4-5,3-5と肉迫している。特に国別対抗ではゲームカウント4-3とリードさえ奪い、全くどっちに転ぶかわからない展開に。さすが、とうならされた。この試合については観戦記にゆずりたいが、ここでヒースーが勝っていれば大会はどうなっていたのだろうか。

 ヒースーの選んだ戦術は当然のようにダブルフォワード。しかしそのスタイルだけでは、今回のチーム力では、どうにもならないことは知り尽くしていたようで、非常に過激な戦術にでた。早め早めの勝負を仕掛けてきたのである。もっともダブルフォワード自体がすでにそういう攻撃的なスタイルなのだが、そこをさらに一歩踏み込んだ、かなり「ヤバい」テニス、いけるボールは全部いく、フォーメーションもへったくれもない、とでもいうようなテニスである。こんなことができるのは旧ルールシングルスを極めた韓国4トップのみ、なかでも劉永東と金煕洙だけだろう。とにかく、徹底したヒースーの個人技の世界が繰り広げられる。彼の技量が最大限に発揮されたわくわくするようなテニスになった。

誤解してほしくないのは、彼が決してひとりよがりのテニスをしたのではないということである。やはりそれはフォアザチームのテニスというか、勝つ為に最善の選択をしたにすぎない。ヒース−の下でボェ・ウオンソンもイ・ゾンウーものびのびとテニスをした。初出場とは思えない程に力をだしていたのである。このへんのヒースーの力量はたいしたものである。

下は左右逆版

 それがもっとも奏功したのが、この個人戦ダブルスの葉佳霖・黄軍晟戦。葉・黄は、この後、札幌国際で完勝したように実力は高い。ヒースーはまさにそれを力と技でねじ伏せた。  

 なかでも圧巻だったのが4ゲームめ。ゲームカウントは2-1でイ・キムのリードという局面である。

 一本目、イ・ゾンウーのサーブ(ファースト)がクロス一杯へ。対する葉佳霖はストレートへの猛烈なアタック。しかし、これはヒースーが誘った風で、まってましたとばかりにタテ面で外へハジキだす(無論クロスへのサーブはヒースーの指示である)。
 二本め、イ・ゾンウーのファーストはフォルト。セカンドサーブ、黄軍晟(サウスポー)クロスへの強烈なリターンをヒースーがセカンドポーチ(これがこのページの画像)。
 三本目、この大会のために準備したともいえる強烈なヒースーのトップスピンサーブ、対する葉佳霖のリターンはネットにあがるヒースーの足元にディンクショット、ヒースーはこれを得意の裏面で軽業のようなハーフボレーをストレートに、黄軍晟の逆クロスへの返球を絵に描いたようなバックポーチボレー。

イ・ゾンウー

 四本目、ヒースーの強烈なスピンサーブが黄軍晟のラケットを弾き飛ばしエース。4連続ポイントである。
 このゲーム、イ・ゾンウーはサーブを打っただけ。あとはヒースーひとりでやってしまった。あぜんとするような離れ業。「ひとりで4本」である。台湾期待の若手を完全につぶしてしまった。ブラボーヒースー!!


 ちなみに葉佳霖・黄軍晟はダブルフォワード。本来は葉佳霖がネットプレイヤー。黄軍晟がベースライナー。しかし黄軍晟はサウスポーなので、当然のように、彼がアドコートでリターンする。つまりダブルフォアハンドである。

 

 さてこの画像でのヒースーの動きをみてみよう。まずスタンス。左足をやや前にだした彼独特のスタイル。そこから四股を踏むような、左右二方向へのフェイクモーション。 動画では、威圧するようなヒースーのステップ音が二つ、はっきり聴き取れる。モーションには基本となる単モーションとフェイクをいれた複モーションがあるが、ここでのヒースーは最後のポーチも含めるとワンプレーで3つのモーションをおこしていることになる(三段モーション)。

これは3位決定戦での金煕洙。

 最初の左方向へのフェイクモーション(3〜6コマ)はイ・ゾンウーの放ったサーブがネットを越すか越さないかのタイミング。その後、間髪いれず、右方向への二度目のフェイクモーションをおこし(6〜8コマ)、さらに複雑な情報を相手に与えている。これはボールがバウンドするかしないかのタイミング。
 そして本音ともいうべき最後のモーションが、逆クロスへのポーチボレー。イ・ゾンウーはオーヴァーヘッドの質の高いセカンドを打つが、セカンドはセカンドである。黄軍晟のフォアハンドリターンはコート内しかも高い打点からの超攻撃的(ハードヒット)ライジングであり、間合いはとても難しく、かなりバランス的には苦しいボールになったが、ものの見事にラケットの芯をとらえたクリーンヒットボレーになった。大体がセカンドポーチ自体がアンセオリーであり、しかも相手は台湾である。常に決定的な打球がなされる。ヒースーはここまで黄軍晟のリターン全てにポーチをしかけているが、それはすべてファーストだった。葉佳霖もセカンドポーチに対してはまったく無警戒だったようでまるで反応できていない。

金煕洙のボレーグリップ(左)。劉永東や金耿漢にくらべてやや厚めのウエスタングリップ。右画像はグラウンドストローク時のグリップ。ボレーのときは若干短かめに持つ。ボレーで短くもつのは、相手のパワーに負けないため、とヒースーは語ってくれた。
 彼はグラウンドストローク、ボレー、オーヴァーヘッド毎に、基本となる最低3種以上のグリップを使い分けている。それ以外にももちろん細かいもち替えが発生することはいうまでもない。

 この逆クロスポーチは、韓国風というか、実にシンプルに押さえている。コンパクトなテイクバックをどうか見のがさないでほしい(17コマ)。ラケット(面)が顔より後ろにいってないことがよくわかるだろう。ラケットが視界から消えると途端にそのコントロールはむずかしくなり、こういった(この画像のような)刹那的なプレーではミスが増える。
 逆足気味?との声もあろうが、ここでは日本でいうところのタテ面取りの発想(フットワーク)であり、関係ない。というかこうなることも「想定内」である。「韓国前衛」イコール「タテ面」イコール「リーチがない」、ということをすぐ言い出すひとがいるが、ヒースー、ヨンドンを知る人にとってはタワ言、妄言の類にしか聞こえない。そんな単純な話しではない、そんなやわな技術ではないのである。そのことについては別の機会に。(by TOSHI)

 
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