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今流行りの言葉を使ってみるなら、今回、いわゆる『勝ち組』は李佳鴻・劉家綸(台湾 出場は国別対抗のみ)、王俊彦・趙士城(台湾)、林舜武・李佳鴻(台湾-このペアは個人戦のみ)、朴昌石・金裁福(韓国)ということになる。李佳鴻・劉家綸は全勝、王俊彦・趙士城、林舜武・李佳鴻は一敗、朴昌石・金裁福も一敗。王俊彦・趙士城の一敗は朴・金に負けたものだし、朴昌石・金裁福の一敗は李佳鴻・劉家綸に、林舜武・李佳鴻は王俊彦・趙士城に負けたもので、見事この4組のなかで完結している。
この四組ともがダブルフォワード。王俊彦・趙士城、林舜武・李佳鴻は『後衛』と『前衛』によるダブルフォワード、朴昌石・金裁福もそう。李佳鴻・劉家綸はダブル『前衛』によるダブルフォワードだ。
共通点をみると7人(のベ8人 李佳鴻がダブっている)とも非常にレベルの高いカットサーブを行い、つまりどのペアも二人ともカットになる、いわば『ダブル』カットである。さらにセカンドも殆ど遜色のないカットでくる。つまり本当の意味での『ダブル』ファーストである。
セカンドのクオリティをファーストに近付けることは、当然、ダブルフォルトのリスクが高まることになるわけだが、カットサーブ完成度が高いので(確率の問題で)それほどダブルフォルトはでない。
大切なことをもうひとつ忘れていた。右利きと左ききがペアを組み、その二人ともがカットサーブということはだ、レシーバーからすると、左右のカットが交互に襲い掛かってくることになるのである。なにをあたりまえのことを、といわれるかもしれないが、経験のある人はもうお気付きのとおり、左と右のカットではその位相がまったく逆であり、そのリターンの恐るべき困難さは想像を絶する。
さらに重要な共通項。勝ち組4組ともライトハンダ−(右利き)、レフトハンダー(左利き)のペア。それだけでなく、リターン時(レシーブサイドの時)デュ−スコート(右側つまり順クロス)にライトハンダーがポジションし、アドコ−ト(左側つまり逆クロス)にレフトハンダ−がいるのだ。つまり全員がフォアサイドでプレーすることになり、これが圧倒的な攻撃力を生み、ダブルフォワード戦術をリターンサイドでも確かなものにしていく。つまり『ダブル』フォアサイドである。実はこれが今回の最大のキーではないのかと考えている。
ルール変更でサービスサイドの優位性は絶対的なものとなったが、『負け組』の放ったサーブはオーヴァ−ヘッドのいわばノーマルサーブである。ハードコートとはいえ、絶妙なコントロールとある程度のクオリティがあればそれでも有利にゲームを運べるが、それもあまりない。
日本男子ということでいえば、そのサービス力は2000年アジア選手権、2001東アジア五輪と最強を誇り、この2大会での国別対抗連勝のおおきな力となった。韓国、台湾の首脳陣は異口同音に「日本のサーブにやられた」と嘆いていたのを思い出す。しかし、それ以降、不可解なことに、(日本の)サービス力は停滞、というよりむしろ、はっきりと後退している。
今回はハードコートということでオーヴァ−ヘッドでは高がしれている、と軽視していたのか?
特に李佳鴻、趙士城のリターン力は凄い。フォアサイドでリターンすることの利を知り尽し、活かし切っているといったぎりぎりのものである。ファーストレシーブでもコート内でリターンすることがおおく、それは当然ライジングであり、超攻撃的なスタイルになる。その分、当然リスクも大きいが、しかし、今回はだれもその穴をつくことができなかったのである。
中堀・高川戦の中盤、中堀が放ったコーナー一杯のファーストをコートの外からダウンザラインに放った李佳鴻のリターンは凄かった。ベースラインより1メートル前方からライジングで放たれたボールは飛行中ほとんどコートの外にあったのである。
もちろん、日本の高川、川村もレフテイ、そして、『前衛』、なのでフォアサイドでプレーする。特に高川のリターン力は恐るべきものなのだが、その攻撃力はカットサーブで完全に封じられている。
中堀・高川の国内でのタイトル数は史上でも圧倒的に多いが、その強さの一端がこの高川のフォアハンドでのリターンだ。レフトスピンのきいたその打球はサーバーをはるかコートサイドに追い出してしまう。脅威以外のなにものでもない。このことは以前にも書いた。
この3つの『ダブル』。ダブルカット、ダブルファースト、ダブルフォアサイド、これが今回のダブルフォワード成功の三要素(トリプルD)である。
韓国のもう1ペア徐教源・方峻煥もダブルフォアサイド組だ。徐教源は本来ベースラインタイプ(いわゆる後衛)だが、サウスポーなのでアドコートでサービスリターンする。韓国もつまりわかっていたのだが、彼らはダブルフォアサイド先進国台湾の林舜武・李佳鴻のダブルフォアサイドになすすべなく敗退。先進国といったのは謝(レフティ後衛)・陳が1999年にダブルフォアで世界チャンピオンなっているからだ。ちなみにこの謝・陳もトリプルDをほとんど満たしていた。
この徐教源・方峻煥vs.林舜武・李佳鴻のダブルフォアサイド対決は林舜武・李佳鴻の一方的な勝利におわったのだが、林・李のカットにリターンが封じられたのはともかく、サーブがだめだった。方峻煥、徐教源ともカットサーブで武装していたし、そのサーブ自体威力は十分すぎるほどであったが、セカンドにそれをもちいることができなかった。つまりダブルDにとどまっていたのである。
ちょっと余談になるが、こと日本においては、伝統的に逆サイドでのリターンは右利きにとってバックサイドになることもあって、非常に守備的なものが慣例化していた。バックで高さをつけた安全飛行が理想、なんていう教えもある。前衛のレシーブはバックで、というのは日本のソフトテニス界至高(?)の金言である。たしかに右利きがバックでリターンすることはミドルにすきをつくらないし、サイドライン鋭く切れ込む打球も可能である。
しかもネットに早く上がることができる。雁行陣への重要な布石なのである。
前衛の攻撃的なレシーブが、セカンドレシーブはともかく、否定的にみられたのはやはり雁行陣信仰があったとしか思えない節もある。旧旧ルール時代、雁行陣が敷けなかったのは前衛のリターン時のみだった。リスクのある攻撃的なリターンよりは、無難に返しとにもかくにも雁行陣にという思想はまちがいなくあったし、それがやがて本末転倒な..........まあここではそのことに深入りはしまい。
しかしバックハンドが柔軟性にかけるのはこれもまた明白な事実で、たとえば鋭いカットサーブのリターンはウエスタンバックハンドでは非常に困難である。90年代後半から台湾、韓国の前衛の名手たちはフォアでの攻撃的なリターンを積極的におこなってきた。劉永東や葉育銘、方同賢が代表的だ。劉永東はバックの名手だし、葉育銘もそうだが、あえてフォアの攻撃性を選んできたのだ。もちろんオープンスペース(ポジション制約のため)の多かった前ルールということも見逃してはならないが。
日本で常識とされていたことがガラガラ音をたてて崩壊するのがみえるのは国際大会の常であり、それはむしろ快感でもあるのだが、今回は刺激が強すぎた。ただ今回の連載で繰り返してきたように、その前兆は、確実に感じとれるレベルで、あったのだ。それを声を大にしていっておきたい。今回、ルール改正、そしてハードコートと条件が揃って大噴火となったのである。
果たして、我々がみたのは雁行陣の終焉だったのか? それとも....................続く
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