第1回 チェンマイの韓国男子
大会前夜、リラックスしている世界チャンピオン方峻煥。ナイスガイである。見てのとおりのイケメンでもある。ジュンサマと呼ぼう!!

 プレヴューでは台湾一歩リードと書いた。しかし大会開幕前々日の6日、韓国選手団の練習をみた我々は息を呑んだ。現地からレポートするつもりで書きかけたレポートには

「今日6日、実際コートにいってみて、韓国、台湾の練習を実際にみたことで、あたりまえだが、 前回のプレヴューから見直したい気になってきた。男子の話しである。 韓国がやはり一番凄いと思う。一歩でているのは台湾だ、と書いた、すくなくとそれは撤回して、一歩リードしているのは韓国だ、としたい。 むろん試合が実際にはじまってみなると、どう転ぶかは全く予断をゆるさない。
 方峻煥がすごい。なんというストローク力か。団体、シングルス、ダブルスの三冠制覇の可能性もある」

とある。

 方峻煥--BANG Jun-Hwan--は昨年の世界選手権でシングルス、ダブルスの2冠王。国別対抗こそ2位だったが、彼自身は日本戦、台湾戦とも快勝。ただひとり全勝で大会をおえた。

練習での方峻煥。

 なんというストローク力か、とあるが、史上最強レベルかも、と昨年書いたバックはむろん、フォアハンドにおける高度に安定した球筋と球質には唖然とさせられる。へんな話しだが彼ほど低い打点でフラットボールをうてる人を他に知らない。本来がネットプレイヤーの彼のストロークは高い打点からがんがんというのではない。むしろセーフティなミスのでないグラウンドストロークが持ち味なわけだが、それをそのままで極限まで強力化してしまったとでもいうのだろうか。韓国4トップ(劉永東、金煕洙、金耿漢、方峻煥)のなかではもっとも特徴に乏しいとおもってきた方峻煥だが、ここにきて俄然魅力的な存在になってきた。

 国別対抗決勝での方峻煥はその練習で見せた迫力をそのままわれわれに見せつけてくれた。 そんな、彼が僅か2時間後に個人戦の初戦で敗れてしまうなんてとても想像できないことだった・・・

 大会前の韓国選手練習風景

 久々の金煕洙--KIM Hee-Soo--。やっぱりヒースーはヒースーで、その練習での迫力、物凄さはもう大会見なくてもいい、と思ったほどだ。これは別に皮肉でもないし、なにか含みがあってそういっているわけでもない。彼のパワー、そして技術が非常に高いレベルで完結しており、練習をみているだけで我々はある種のカタルシスを感じてしまったのである。我々とつい書いたが、つまりそうかんじたのは私だけではない。だれだってあのヒースーをみればそう思うのではないか。われわれの感動と嘆息が彼にも伝わるのか、そのパフォーマンスはさらにヒートアップしていく。彼にはそんなお調子もんのところもある。それがゲームでは欠点につながっているともいえるが・・・

 ただ金煕洙は実は万全ではなかった。7月に足を手術(半月板)したところだったらしい。練習では問題ないものの、実戦となると、ヒースーらしからぬミスがちらほら目立つ。スマッシュもヒース−にはまったくめずらしくたたきれない。あくまでヒース−にしては、という意味であり、はじめて見る人にはおそらく感じとれないのではないか、とおもうのだが・・・ゲーム勘のようなものももうひとつである。手術の時期を考えると驚異の回復力だが、まだまだ彼は試運転といったところではないだろうか。

大会前々日の韓国前衛練習より。男女合同で行っていた。注目は右の2枚のフォアボレー(金煕洙、方峻煥)。日本のボレーとは下半身の使い方がちがうのがはっきりわかる。難しいはなしだが・・・

  すでにお伝えしたように韓国は今回特例として代表に学生枠を設けた。学生のみの予選をおこない、男子は二人(ダブルス予選)女子は一人(シングルス予選)を代表としてチェンマイに送り込んできた。男子でその学生予選に優勝したのは既報のとおり学生王座でおなじみの大邱カソリック大学の選手である。その二人は王座で会った半年前とはたくましさがまるで違っていた。今回、ある意味イレギュラーな代表入りなわけだが、それを感じさせない代表としての風格がただよっている。韓国はこの大会に向けて1ヵ月の合同合宿をおこなった。その中でおおくのものを学んだのであろう。

 彼らは学生予選一位とはいえ、大邱カソリック大学のなかで一番手というわけではない。ベースラインタイプの金裁福はせいぜい3番手、サウスポーのネットマン朴昌石は2番手である。一番手でないとはいっても実力は拮抗しているわけで、予選では他の強豪大学もふくめて大混戦となったようだ(最終予選対戦表参照)。なにがいいたいのかといえば、韓国国内の層の厚さ、競り合いの厳しさを訴えたいのである。

国別対抗決勝での金裁福・朴昌石(右)

 結果的に金裁福・朴昌石は今回ダブルスチャンピオンになった。昨年、彼らの(大邱カソリック大学)プレーを大学王座ではじめてみたとき、「日本の学生レベルで勝てる相手ではない。ナショナルチームとの対戦をみたい」と書いたことがある。はからずも今回の結果はそのことを裏付けてしまったことになる。ただこの個人優勝は掛け値無しといわけではなく、ある非常に書きにくいそして腹立たしい、またどうしようもない事情の上に成立していて、複雑な気分になる。このことはまだ書きたくない。準決勝が片方が台湾同士、もう片方が韓国同士だったことで察してくださる方もいるだろう。ただいえるのはこのペアは準々決勝で日本の花田・川村に完勝。一方、国別対抗の決勝のトップでは台湾の想像を絶するスーパーペア劉家綸・李佳鴻に完膚なきまでにたたきのめされた、ということである。

黄晶煥、今回はもう一つの出来だった。

 その1ヵ月の合宿は当然ハードコートでおこなわれたのであるが、それではコートへの備えは問題ないのか、というと、そうでもなくて、そのコートとチェンマイのコートとはかなり違っていて、とまどいが随分あったようだ。練習をみているぶんにはそれはほとんど感じられなかったが・・・・

 韓国にハードコートはすくない。農協や聞慶には練習用のハードはあるが、大会となるとクレーばかりになる。この大会の予選もクレー(安城)で開催されている。

 ハードと一口にいっても数種類あり、グリップの仕方、ボールのはずみ具合等、随分ちがってくる。デリケートなソフトテニスボールならなおさらである。韓国はほぼプロフェッショナルであり、おそらくもっとも真摯にソフトテニスに取り組んでいる国であるが、この韓国内でのコートの偏りはやはり欠点であろう。もっといえばプロフェッショナルな取り組みだからこそATPのアルゼンチン選手やスペイン勢のような状態に陥る?可能性も十分いや十二分ある、ともいえる。もちろん韓国自身はそのいびつさを充分にわかっているし、ちゃんとハード用にそれなりに仕上げてはくる。だからとくにハードだからということで過去の成績が極端にかたよることはない。特に1998年のバンコクでアジア五輪の見事なテニスは忘れ難い。

ちなみにタイでは今回も含めて3度目の国際大会になるが、全てハードコートでおこなわれ、男子国別対抗の決勝はこれもすべて韓国vs.台湾。対戦成績は韓国の2勝1敗。

 今回、韓国は大会全体として台湾に完敗の感があるが、台湾との直接対決は全種目あわせて計7回あり、韓国の3勝4敗と拮抗している。

国別対抗決勝も紙一重の接戦だった。国別対抗決勝における獲得ゲーム数は韓国10、台湾11とわずかに1ゲームである。その決勝は国際大会ならでは、という大熱戦であり、昨年の世界選手権の決勝ほどではないものの、チェンマイまではるばる見に来た価値は充分にあるものだった。

韓国
台湾
朴昌石・金裁福
劉家綸・李佳鴻
方峻煥
林舜武
黄晶煥・金煕洙
王俊彦・趙士城
↑以上国別対抗
黄晶煥
劉家綸
徐教源・方峻煥
林舜武・李佳鴻
朴昌石・金裁福
林朝章・劉家綸
朴昌石・金裁福
王俊彦・趙士城
 韓国の挙げた3勝のうち、シングルスでの方峻煥の勝利をのぞくと、あとふたつを勝ったのは金裁福・朴昌石である、彼らはネット並行陣、いやこの言い方は嫌いだ、ダブルフォワードと呼ぼう、であり、昨年の世界選手権での思わぬ敗戦をうけて、韓国が台湾対策、いやハード対策を練ってきたことがわかる。夏に日本にやってきた大邱カソリック大学はダブル前衛を一度つかったぎりで、あとは大昔にかえったようなオーソドックスな雁行陣に終始し、これはつまらんな、とがっかりしたものだが、さすがに今回は違っていた。朴・金は台湾戦2勝1敗だが、負けた相手は李佳鴻・劉家綸の最強ダブルフォワード。

いまのところこのペア--李佳鴻・劉家綸--に勝てる方法はないとおもう。金煕洙・金耿漢とやらせてみたい。

 (金・朴が)勝った相手のうち、王俊彦・趙士城がダブルフォワード、林朝章・劉家綸は雁行陣。
 黄晶煥・金煕洙はもちろん雁行陣型。国別対抗の決勝三番勝負ではダブルフォワードの先駆け王俊彦・趙士城に1本のジャッジミスから逆転負け。この1本は今後のソフトテニスの行く末を決める大きなジャッジミスだったのではないか?

ファイナルゲーム黄晶煥・金煕洙4-1のリードからの金煕洙の超高速フラットサーブ(バズーカではない)がノータッチエースとなったが、フォルトの判定。あきらかにインであった。

徐教源・方峻煥

 徐教源・方峻煥は国別対抗では出番なく個人戦では2試合しかしていない。大会前の練習をみるかぎりではダブルフォワードを目指していたことは間違いない。
 徐教源は韓国では珍しいサウスポーのベースライナーで常にレフトコートでかまえる。 ライトコートは方峻煥がはいり、順クロスを消している。 あの謝・陳(台湾)が1999年の世界選手権で優勝したときとおなじ陣をしいているのである。
 その練習ゲームでは会場全体の注目をひくほど新しい韓国をみせていた。日本の首脳陣も注目し、われわれも本番への予感にぞくぞくしたものだ。 しかし、徐教源は国別対抗戦にはつかわれず、個人戦の三回戦(8本取り)で林舜武・李佳鴻にたいした山場もなく敗れてしまう。 徐教源も方峻煥もまったくいいところがなかった。ダブルフォワードに徹し着れず、中途半端なテニスに終始した印象であった。

左から朱監督、朴昌石、方峻煥、金裁福 ひとりおいて 金煕洙、徐教源、黄晶煥

 無論、林舜武・李佳鴻はすばらしかったし、まったく質の違う、徐・方だけでなく王・趙とも、テニスであった。これは台湾選手の項で述べたい。 徐教源と方峻煥は普段組んでいるペアではない。やはり、時間が不足していたのか。 ただペアリングだけでもむずかしいのにハードコート用に仕上げるにはさらに時間が必要なはずである。 つまり、これは徐教源・方峻煥が弱かったとかハードにあわなかったというよりは、単に未完成であったというのが本当のところだろう。 韓国もサンム(軍隊内チーム)のころのように国際大会オンリ−という時代ではとっくになくなっているからである。

結論めいたことをいえば今大会はダブルフォワード対雁行陣という図式であり、ダブルフォワードが圧勝したということである。