男子団体準決勝 日本vs.ソウル チャイニーズカップ2010観戦記
日本ナショナルチーム選抜A(篠原、小林、菅野、柴田、玉川) vs.韓国B。韓国Bは選抜チームではなく、ソウル市体育局(ソウル市庁)の単独チーム(韓国Aは学生チーム)。
韓国からは例年、ソウルのチームがやってくることが半ば慣例となっているようだ(昨年は学生チームのみ)。
女子の農協もソウル市である。
余談になるが、数年前にはすでに現役引退していたユウヨンドンがソウルの選手と組み、サプライズ出場(ヨンドンは農協のコーチとして中国にきていた)し、花田・高川等を破って優勝したことがある。2006年のヒストリックリターン以前の話だ。
フェアなサーフェースでこそ、実力が計れる
ソウル市体育局は日本と縁が深く、全日本社会人に出場したこともあるし、昨年、岐阜で開催されたエキシビション大会(ドリームマッチ)にも招待されている。
韓国ではどれくらいの(実力の)チームなんですか?と質問をうけたが、十数チームある韓国プロ球団のなかで中堅といったところか。ベスト8にははいっていると思う。
日本の大会ではもうひとつ冴えないかんじだが、あれを実力と思ってもらっては困る。日本のサーフェースはあまりに特殊(砂入り人工芝や板張りインドア)だからだ。フェアなサーフェース(ここでのフェアとは、どこにでもあるというほど意味)でこそ、実力が計れるというもの。国際試合はクレーあるいはハードでみたいものである。
ソウルチームは最近メンバーがかなりいれかわった。あのチェチフンが引退、ユウ、ハンの移籍と、戦力ダウンかと思ったが、ナン(テグカソリック大学 ドーハアジア五輪代表)が新卒入団、パクキョンテが2年あまりの軍隊生活を終え復帰し、若手の台頭もあり、むしろ以前より充実してきた。
胸躍るカード
トップはそのパクキョンテ・ヤンチンハン。
キョンテは2006年のアジア五輪予選にヨンドンと組み、あわや優勝かというほどの活躍をした。スーパーライジンガーでおそろしく非凡ではあったがきわめて不安定、それをなんとかヨンドンがまとめ2位となり、ヨンドンだけがアジア競技大会出場となった。
落選したキョンテは選手生活を中断し入隊、厳しい軍隊生活を経て、昨年復帰した。
彼のテニスをみるのはその2006年以来のことだ。正直なところ2006年時には?だった。なにせパートナーはあのヨンドンだったし、彼の足を引っ張っているようにしかみえないのはしょうがない。
久々にみたキョンテ、落ち着きがでて、右足でためてボール引きつける韓国のお家芸もさまになり、ぐっと安定感をました。ライジングでの早い攻めも健在であり、今後がうんと楽しみである。大物後衛の予感さえする。実際、篠原・柴田をあっというまにとばしてしまった。篠原はノーカット、雁行ベースで彼のベストフォームではない、にしてもである。

話が前後する。男子準決勝開始時にはますます暗くなり、照明にも灯がはいる。雨は今にも落ちそうでスコール必至の状況、なんとかもってくれ、という希望すらもてないかんじ、いつでも機材をかかえて逃げられる準備だけは整えての観戦だ。ナイターといっても設備はやや貧弱でほの暗い。そんな中での男子準決勝同時進行、かたや韓国vs.日本、隣では日本vs.台湾、胸躍るカードである。

確信にみちたすごみ
話をもどそう。先頁ででたパクキョンテと団体戦で組んだのがヤンチンハン。2008年のアジア選手権でイヒョンス(タルソン)とのペアで優勝したベテランネットプレイヤーだ。アジア選手権にはBチームとしての出場だった。このBチームというのはアジア選手権と世界選手権における開催国ワイルドカードのことで個人戦のみに出場できる。Bチームつまりワイルドカードから国際大会を勝ちきったというのは1998年世界選手権の謝・陳(台湾)とこのイ・ヤン(李・梁)以外に例がない。韓国男子の層の厚さを示しているといえよう。
そのアジア選手権個人戦ダブルスで彼らは篠原・小林のパッキンにはいった。篠原・小林はペアとして四大国際大会初出場、その初戦の相手がイヒョンス・ヤンチンハンだったわけだ。

この試合、ヤンが縦横に勝負しまくり圧倒。篠原・小林の国際大会デヴューは、何と0−4!!苦い味の船出となったわけである。
今回の展開もそれと酷似。ヤンの圧倒的運動量は相変わらずというかアジアチャンピオンを奪取したことでそれは確信にみちたすごみを増している。実際、現在みていて、もっとも魅力的な選手の一人である。
読みと駆け引き

ヤンを初めて意識してみたのは2007年の熊本インドア。
このときはチェチフン(史上最速の男!)とのペアでやってきた。予選リーグで一勝一敗、あまり記憶にない。
チェも盛りをすぎてテニスが大人しく(彼の全盛は90年代後半〜2002)、またこのときは台湾の楊勝發・李佳鴻が全盛であったこともあり、余計目立たなかった。
韓国選手らしくよく訓練されていて、切れは良いが、スリートップ(ヨンドン、キョンハン、ヒースー)とくらべると、技術的な遜色があるように見えた(無論きわめて高度なレベルでの話)。
ボレーグリップが厚過ぎて、フォアで面がつぶれる、つまりリーチがない、それは現在でも同じだが、それを驚異的なフットワークでカバーしている。無論、ただ走りまくるだけでポイントできるわけがない、そこには読みと駆け引きが必要になる。ネットプレーではあまりつかわないがそれらを融合したことばであるコートカヴァリングというべきか。
ポイントすることへのおそるべき執着は優れたプレイヤーとしての基本条件
実際、現在みていて、もっとも魅力的な選手の一人。圧倒的な迫力とスピード、型破りな運動量、それを実現する身体能力、全く独自な境地を見いだしたのだ。ポイントすることへのおそるべき執着は優れたプレイヤーとしての基本条件であるはずだが、それをスポイルするような指導がされがちなどこかの国では生まれにくい個性といえる。
このゲーム(チャイニーズカップ2010の話だ)の大詰め、とうとうバケツ、いや風呂桶がひっくり返り、あっという間にコートは、水浸し。豪雨いや猛雨だ。全員ダッシュで室内コートに移動。

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